第5章は患者主体の診断学における病歴(Past Medical History)
医師は患者の現在の健康問題を評価してしまった途端、次は検査に走ってしまう誘惑にかられる
しかし、患者主体の診断学においては患者からできるだけ多くの情報を引き出すべきである。
患者の症状から情報を得た後にも、まだ病歴、健康に対しての行動、社会歴、仕事歴と家族歴から診断にとって有益な情報が得られる
そして付け加えるならば、病歴は症状に対しての妥当性(validity)と信頼性(reliability)について注目するときには臨床判断過程において特に重要な役割を果たす。
消化器症状の患者例から400例の消化器症状の患者のGPへの紹介事例では症状からの診断して逆流性食道炎、機能的疾患、臓器的な疾患、例えば胆石、消化管潰瘍や癌まで幅広く見てしまい、内視鏡検査を行う際に、患者の年齢、NSAIDs服薬歴や以前の潰瘍の既往歴などに注意を置くベきであると述べている.(大事なことを聞き忘れないように)
患者主体の診断学において病歴を知る為に、2つの点を知る必要がある。それは『予測的妥当性(predictive validity)』と『並存的妥当性(concurrent validity)』である。
背部痛について
背部痛はプライアリケアではよくみられる健康問題である。
患者は原因をまず知りたがり、初期診断に関して長期にわたって議論が戦わされている。
腰椎レントゲン検査はよく行われるが診断がつかないことが多い、または誤った方向に導く場合もあり、被爆とコストの問題がある。
重大な疾患を見逃さない為に生じている問題とも言える。(まずレントゲンでは…ない!)
アメリカの公的病院を受診した2000人の背部痛を主訴とした患者について、癌の診断基準と照らし合わせて病歴、個人特性、症状、検査についてまとめた。 (DeyoとDiehlet al , 2000)結果からは、ESRも有効な指標となり20以上でLR+2.4, ESR50以上ではLR+19.2になる。
治療歴とESRを組み合わせればレントゲン使用を22%減らすことが出来る。(レントゲンではなくてESRをとってみよう)
病歴聴取から背部痛とがんの関係は?
clinical feature LR+
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previous history of cancer 14.7
sought medical care 3
in last month
age>50 2.7
unexplained weight loss 2.7
episde>1 month 2.6
insidious onset 1.1
muscle spams 0.5
spine tenderness 0.4
動悸もまた病歴が重要な情報となる症状である。Zwieteringらが2年以上の期間で、762人の不整脈診断に至ったはじめて動悸を主訴にして受診した患者に対して構造的な病歴聴取を行った。総合医に動悸とともに呼吸困難、失神、狭心症状、倦怠感などの症状で受診した患者を対象とし、心電図検査を診断基準とした。果たして病歴聴取から不整脈はわかるのだろうか?
feature in history Odds
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hypertension 1.9
arrthymias 8.5
cardiovascular disease 3.3
cardiovascular 5.8
medication
psychosomatic complaints 0.2
frequent attender 0.4
CNS medication 0.4
もう一度病歴聴取を再確認してみましょう!(寺田豊)