札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年7月4日月曜日

アセトアミノフェン

7月2日、札幌で開催された2011年度3回プライマリ・ケア連合学会のランチョンセミナーの座長を務めた。演者は独協医科大学麻酔学講座の山口重樹准教授で演題は「プライマリ・ケアに必須の薬“アセトアミノフェン”を語る」である。

「痛みの悪循環」を解除するする必要がある。なぜなら痛みが長時間続くと、死亡率が上がるし、痛みは自殺のリスクであるからである。

痛みへの対応は3段階法が進められている。
1. 非オピオイド:NSAIDsとアセトアミノフェン
2. 弱オピオイド
3. 強オピオイド
とは言え、患者さんは意外と痛み止めを飲みたがらない。「胃がむかつく」「麻薬なんてとんでもいない」「副作用が心配だ」「まず病気の治療をしたい」「中毒になるのではないか」と心配するからである。

患者さんが「焼けつくほど痛む」という帯状疱疹関連疼痛は二面性を持つ。侵害受容性疼痛(危険を知らせるサイン)から神経障害性疼痛(機能性)に変わる。抗うつ薬、抗けいれん剤、オピオイドが効く。まず抗ウイルス薬、初期の鎮痛薬の投与が大切である。

NSAIDsはプロスタグランディン類産生抑制作用、抗炎症薬である。最初に開発されたのはサルチル酸である。日本人の医師・患者に好まれているのは、ボルタレンとロキソニンであるが、副作用が問題となる。特に胃潰瘍、腎機能障害、血小板障害、が問題となる。20%で抗凝固療法が行われている。加齢による腎機能の低下。また骨粗鬆症剤とNSAIDs併用は胃潰瘍発症を増やす。帯状疱疹に用いるアシクロビルの副作用は急性腎不全であるため、併用は危険を伴う。米国での副作用発生数は16,000件/年で、第3位であった。(1999年)。そのような副作用がないと言われたCOX-2選択的阻害剤にも副作用はある。特に心血管系の副作用があることがわかり、失望が広がっている。

アセトアミノフェンを鎮痛薬として使うことが重要である。そのためには現在の使用量は少な過ぎる。世界の潮流は4,000mg/日になっている。先週視察したドイツではアセトアミノフェンが術後痛にルーチンで投与されている。これによってオピオイドの使用量が減っている。オピオイドとアセトアミノフェンの合剤もでてきた。

アセトアミノフェンの長所は、安全域が広い。長期投与が可能。非常に安い。誰にでも使用できる。空腹時によく効く。高齢者に使いやすい。豊富な剤形。NSAIDと鎮痛効果は同等である。癌性疼痛にも第一選択にしてよいと思う。
短所をあげると、少量では効かない。大量服用によって肝機能障害が起きる。注射剤がない、くらいか。

歯切れがよく、エビデンスを踏まえた大変有益な講演であった。またユーモアもあり、出身地の足利市の宣伝もされた。「足利学校」、「Cocoワイン」、「世界一の藤棚」、「あいだみつを」が自慢だそうだ。

NSAIDsの使用を減らして、もっとアセトアミノフェンを使おうと思わせる内容であった。(山本和利)