札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年7月17日日曜日

指導医養成講習会

7月16、17日、第6回札幌医科大学付属病院 臨床研修指導医養成講習会にチーフタスクフォースとして参加した。当日、同会場で7:15から打ち合わせ。参加者は31名。

まず堤裕幸センター長の挨拶、タスクフォースの紹介後、堤裕幸センター長から「札幌医大の初期臨床研修」の講義。本年度の初期研修医数は32名。続いて山本和利のリードで「アイスブレイキング」。偏愛マップを使って、雰囲気を和らげた。1時間の散歩や能楽鑑賞を趣味とする参加者もおり、医師の趣味の多彩なことに驚いた。

続いて北大の川畑秀伸氏の主導で「カリキュラム・目標と方略」を150分。アウトカム基盤型カリキュラムのミニレクチャー後、competency(その職業に期待される態度・思考・判断の特性)をグループで設定してもらった。研修環境を独自に設定してもらったためか、各グループから個性的な意見がだされた。

昼食後、江別市立総合病院の日下勝博氏の主導で「上手なフィードバックをしよう」のセッション。自己分析能力の高い研修医、生真面目だが気づきの少ない研修医、能力以上に自己評価が高い研修医という3シナリオを用いたロールプレイを行った。3人一組でのロールプレイは研修医役、指導医役、評価者役をそれぞれ1回ずつ。受講生として参加した教授も准教授も役になりきって熱演していた。

続けて勤医協中央病院川口篤也医師の主導での「教育の評価」は、3シナリオを準備していずれか1つのシナリオに沿ってロールプレイを行った。最初に初期研修医評価のための指導医会議(指導医、看護師長、看護主任、ソーシャルワーカー、等)を模擬体験した。患者ケア、医学知識、症例に基づいた学習とそれに伴う向上、コミュニケーション技術、プロフェッショナリズム、システムに応じた医療、の6項目について評価をしてもらった。

続いて「北海道における地域医療の現状と道の取り組みについて」と題したセッションで北海道庁の杉澤孝久参事が講演された。医師数は西高東低。道内は全国並み。2010年6月現在、医師は道内では1,007名不足。質疑応答後、第一日の日程を終了し、写真撮影となった。

第二日目は、幌加内国保病院の森崎龍郎氏の主導で「5マイクロスキルの実践」セッション。一番の問題は、研修医が考えて答える前に、指導医が答えを言ってしまうことである。今回お勧めのマイクロスキルは5段階を踏む(考えを述べさせる、根拠を述べさせる、一般論のミニ講義、できたことを褒める、間違えを正す)。外来患者シナリオ8つを用いて2人一組になってロールプレイ(シナリオの読み上げ)を行った。最後は、自分たちでシナリオを作成してもらい、ひとつふたつの自信作を発表してもらった。

続いて、札幌医大松浦武志助教の主導で「医療安全」セッションを行った。はじめにリスク・マネジメントについてのミニ講義。人は何から学ぶか?先輩の背中、プロジェクトに参加して、挫折から、という意見がある。その後、「発熱・腰痛を訴える高齢女性」についてヒアリハット・カンファランスを研修医に実演してもらった。クリニカル・パール:「いつもと違う高齢者:心疾患、感染症、慢性硬膜下血腫、貧血を考える。高齢者のAfは塞栓症のハイリスク。高齢者に尿管結石は少ない。側腹部痛では、大動脈解離、腎梗塞を疑う」。最後に自分の施設でSEAセッションを行うにはどうしたらよいかをグループで話し合ってもらった。

昼食後、武蔵国分寺公園クリニックの名郷直樹氏の「EBMの教育」。高血圧を放置している83歳男性というシナリオでWSが行われた。文献はAntihypertensive therapy with indapamide and perindopril reduced mortality in patients >= 80 years. N Engl J Med. 2008;358:1887-98.を使用。薬が欲しい患者と処方したくない研修医という設定のロールプレイも行われた。

最後は勤医協家庭医療センターの寺田豊氏の主導で「ティーチング・パールを共有しよう」のWS。参加者各自が得意ネタで10分間講義を白板で行い、そのやり方へのフィードバックをしてもらった。テーマは、耳鼻科医を呼んでほしい喉の痛み(口腔3か所をチェック、喉頭蓋炎を見逃さない)、小児のアレルギー(食物アレルギー、牛乳・卵・大豆・小麦、年齢とIgEで考える)、メニエル病(反復する20分以上続くめまい・難聴)、胸部X線読影(まず撮影条件:電圧・体位、肺野は最後に読む)、緊急対応が必要な胸痛(痛みの問診:PQRST)、自己免疫性膵炎(IgG4関連硬化性疾患、膵がんとの鑑別、ステロイド治療)、糖尿病の診断(FPG>126mg/dl、HbA1c>6.1%、国際基準より0.4%低く表示される)、腹部診察の仕方(問診、経過観察が大切)、災害時のトリアージ医療、脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患に注意)、胃食道逆流症、等。

最後に総括として、参加者の感想をもらい、受講者代表として参加した紅一点の医師に終了証を手渡して解散となった。来年度はさらにブラッシュアップして講習会に望みたい。(山本和利)