札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年7月25日月曜日

地域医療教育の新たな展開

7月23日、広島市で行われた日本医学教育学会の「地域医療教育の新たな展開」のシンポジウムを拝聴した。

松本正俊氏:地域医療教育のエビデンス。
世界中で「都市部への医師集中、地方での医師不足」は認められる。地方の居住者は50%、そこにナースの38%、医師の24%が住んでいる。
日本で医師数は増えている。具体的には20年で1.5倍になったが、相対的に地方に医師が少ないのが問題である。
へき地に定着しやすい医師とは次の4つの者である。
1) 地方出身者:2.9倍
2) 総合医:3.1倍
3) 早期に地方勤務を経験している:4.7 倍
4) へき地医師養成プログラムの医師:4.7倍

このエビデンスから言えることは、1)へき地出身者の医学部入学比率を向上させること、2)卒前の地域医療教育を充実させること、3)総合医を重点的に育成すること、4)卒後早期のへき地医療経験を増やすこと、である。

長谷川仁志氏:地域基盤型教育体制の構築。
秋田県は2次医療圏が医師不足であり、日本中県庁所在地以外は医師不足である。日本では中年後、専門医を続けている医師は少ない。
そこで学生には螺旋的に基本診療、総合力をつけさせることを目指す。現在、カリキュラムを改変して低学年から地域基盤型学習を実践している。医療連携にかかわる能力を低学年から実践する。なんと1年生から医療面接をし、OSCEもしているそうだ。高校生にもアプローチしている。

井口清太郎氏:新潟県の地域医療実習。
5年生に必修、3泊4日の泊りがけ実習、在宅医療実習、夏季実習、ワークショップ
将来新潟県で地域医療を担う医学生が一体となって活動している。

大脇哲洋氏:キャリア教育の重要性。
県内研修医数の低下、中核医療機関への医師が低下、地域枠を作って県内出身入学者が増加。住民の求めるのは、専門医と総合医の両タイプである。
研修医時期に、自分自身のホームタウン・ホスピタルを決める。専門医になる道も探す。

谷口栄作氏:島根県の卒後キャリア支援の取り組み。
生涯教育研修部門、6年生にキャリア面接をする。しまね地域医療支援センター、キャリア支援と生活支援。島根県全体での総合医家庭医育成ネットワーク会議を行っている。

地域医療に関係する講座がたくさんできて、様々な試みがなされるようになっている。成果を出すには長い年月がかかるが、このような講座が一体となって日本の医療を変革して欲しいものである。我々もその一役を担いたい。(山本和利)