『生きるってなんやろか?』(石黒浩、鷲田清一著、毎日新聞社、2011年)を読んでみた。
アンドロイド研究における世界的なロボット工学者と介護からファッションまで幅広く論じる哲学者との対談集である。
本書は、ロボットやファッションの話を通じて人間の「心」とは何かに迫ってゆく。
ロボット工学者からのメッセージ。
1. 人間は自分自身のことをあまりわかっていない。自分自身のことを他人ほどには知らない。
2. 人には歴然とした心はなく、相手に心があると思うから、自分にも心があると信じている。
3. 心とか感情といった意識は、社会的な関わりの中でこそ確信できるもので、実態はない。
自分探しについて。
「自分とは何か」それは「他者の他者」である。他人を意識してはじめて自分の定義ができ、公共的なものになる。「自分の価値は自分で決められない」「自分らしさというそんな属性をいくら探しても、自分にはいきつかない」「自分を知るためには、人と関わるということが大切である」
参考になる言葉。
「価値なんて20年でひっくり返る」「いまが頂点の仕事に就こうとしないこと」「イチャイチャは幸福の原風景」そんな気がする。私も朝、寝床で妻と無駄話をすることが愉しみになってきた。
ゆとり教育について。
「ゆとり教育」は本来、学習者を揺るがすためにあるはずであった。日本の「ゆとり教育」は「教える側のゆとり」であった。教える側の時間がそぎ落とされたので、全部マニュアル化されてしまい、学習者はソツなくこなすが、深く考えなくなってしまった。
心という難しい問題を対談形式で、わかりやすく展開している。(山本和利)