『鯨人』(石川 梵著、集英社、2011年)を読んでみた。
著者はカメラマンで、写真集『海人』で日本写真協会新人賞、講談社出版文化賞などを受賞している。
鯨の島ラマレラでの鯨捕りの様子を記載している。カメラマンという触れ込みなので写真がたくさん掲載されているかというとそうではない。しかし、掲載されている鍵となる写真は白黒であるが、非常に印象的なものである。
鯨を捕ることの大変さ、それゆえ島民たちの鯨を畏怖し大切にする気持ちも伝わってくる。
本書を読むと、捕鯨禁止を訴える白人たちより、はるかに鯨のことを考えていることがわかる。
本書は文庫であるが約20年間の取材をまとめたものであり、捕鯨の準備から鯨との死闘、解体、分配、物々交換等の一連のプロセスが目に浮かび、知らず知らずのうちに島民に感情移入してゆく。
時代の流れで、このような捕鯨の仕方が変遷しているそうだ。読後、少し寂しい気持ちが湧いてきた。(山本和利)