5月21日、札幌市で開催された日本糖尿病会の「経口薬のfirst choiceは」というDebate sessionを拝聴した。
<SU剤>
吉岡成人氏。世界のガイドラインはメトフォルミンである。TZD剤、αGIは大血管に対するエビデンスがない。SU 薬とTZD薬の血糖値降下作用は同等である。どんな薬でも時間経過とともに悪化してゆく。これはSU薬に限らない。アポトーシスを起こすのはSU剤の中でも差がある。TZD薬は浮腫、骨折、心不全、膀胱がんが多い。ドイツでは保険適用が外された。グリベンクラミドは心血管死を増やすが、最新のSU薬にはない。
<TZD剤>
洪尚樹氏。医学の教科書に書かれている半分は将来嘘になる。ACCORD studyから学ぶべきことは、HbA1cは動脈硬化の指標ではない、ということである。血糖コントロールの目標だけでなく方法論も大事である。糖尿病の病態を完全に正常化しなければならない。75g-GTTをすべきである。日本人はインスリン分泌が低い。代償能力が低い。低血糖を避けるためにはSU剤を使うべきでない。大血管病変を予防する治療法がよい。HDLを上げる。
洪尚樹氏は、教授等の権威の意見だけが尊重されていると批判した。一部当たっている面もあろう。しかしながら、低血糖の害だけを強調し、高血糖の害については全く語らなかった。「75g-GTTを実施しなければインスリン分泌が機能ができない」という前提で75g-GTTを実施しない医師を批判しているが、そのこと自体にどれだけの根拠があるのか不明であり、彼自体が凝り固まった意見に落ち込んでいるという印象を受けた。TZD薬の浮腫、骨折、心不全、膀胱がんが多い、という害も無視していた。(山本和利)