『二酸化炭素温暖化説の崩壊』(広瀬 隆著、集英社、2010年)を読んでみた。
著者は長年、エネルギー問題について原発から燃料電池まで分析・研究している。世界で気温が下がっているのに、日本では温暖化説が鵜呑みにされていると批判し、最近の20年間の気温グラフを提示して議論を進めている。「人間が出す二酸化炭素によって地球が温暖化している」という仮説は誤りであるらしい。学会の通説は「二酸化炭素にために気温が上がっているのではなく、地球本来の自然な変化である(太陽の活動、太陽に対する地球の地軸の経年的な変化、火山の大噴火、等)」
本書は、二酸化炭素温暖化説は捏造であるという趣旨で書かれている。クライメートゲート事件「気温データの捏造」を紹介している。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の理論とデータが巨大な嘘によって作られていた。1000年間の地球気温の変化をグラフ化すると「ホッケー・スティック」のよう形をしており、それは20世紀に入って急激に上昇しているという主張であるが、実はこれが捏造であるというのである。その中で中世にあった地球規模の温暖化を消去しているという。なぜこのような愚かなことをするのか。温室効果ガス削減を狙って原子力発電所を増設しようとしている一派の目論みがあるからだ。しかしながら温室効果ガスで最大のものは二酸化炭素ではなく水蒸気だそうだ。二酸化炭素の増加は気温上昇の原因ではなく結果であるという学説が主流らしい。
その悪玉としてNHK,気象庁、文科省に矛先が向けられている。北極の氷河が崩れるのは古くから続く自然現象だそうだ。南極の氷は増加しているそうだ。異常な寒さに近年たくさん出くわしているのに、全く報道しない「メディア」、それがNHKということらしい。
単にエコに走ればよいかというとそう簡単ではない。椰子の実洗剤と化学洗剤とどちらが環境に優しいか。もちろん、椰子の実洗剤である。しかし、その生産のため膨大な熱帯雨林が消滅している。喫煙が減っても肺がん、喘息が増加している。
クーラーは室内の冷房装置と我々は思い込んでいるが、都市の暖房装置である。(ヒートアイランド:局地的な温度上昇)人間の少ない場所はみな気温が下がっている。原発は発電量の2倍の熱量で海を加熱している。
最後は、原発の問題点を強調している。結論は、1)炭酸ガスは、異常気象に原因ではない。2)原発は、海水を加熱する巨大な自然破壊プラントである。3)ヒートアイランドを起こす排熱量を極力減らす必要がある。原発から発生する電力は余っているそうだ。著者は、ガス・コンバインドサイクルを推奨している。
鳩山由紀夫も室蘭にある日本製鉄所の利権(原子炉圧力容器の製造)と結びついて原発推進派であるらしい。民主党執行部(前原誠司、仙谷由人ら)も似たり寄ったりである。3月11日の東日本大震災が起こらなければ、原発が推進されていたことは間違いない。一時的にしろ、『不都合な真実』をひっさげて遊説していた原発推進者のアル・ゴアを信じた自分が悲しい。何が科学的真実なのか見極めることは何と難しいことか!(山本和利)