5月21日、札幌市のエルプラザで開催された中村哲氏の「命の水を求めて」という講演会を拝聴した。立ち見がでるほどの盛況ぶりである。学生や研修医の実習でお世話になっている地元医師もみえていた。司会役として札幌医大の私がよく知っている学生さんが登場し驚いた。
第一声は「自然は待ってくれない。」アフガンの様子をビデオで提示しようとしたが、映像が出ないというアクシデント。
28年間の活動を振り返った。現在、ペシャワールは治安が悪い。パキスタンの北西部とアフガニスタン東部は同じ民族同じ言葉。山国である。面積は日本の1.7倍。地域自治が発達している。雪が貴重な水源である。イスラム教。モスク中心。貧富の差が大きい。文化の枠組みの中で最善を尽くす。これまでの医療支援は先進国の都合であって、現地の人のためにはなっていなかった。方針展開をし、ハンセン氏病以外も診ることにした。戦争終結後、世紀の大干ばつが襲った。水不足で汚染水を飲み、慢性下痢で死亡する。
そこで水路建設に乗り出した。アフガンで役に立ったのは日本における江戸時代の工法であった。電気や石油に依存せずにりっぱに水路を保ち、防災機能も果たしているという。東日本大震災後に日本が模倣すべきは、江戸時代の工法やその思想ではなかろうか。
水路完成後に砂漠が緑に覆われた農地の写真はいつ見ても感動する。
講演後の質問コーナー
「リーダーとしての心構えは?」「ニーズがリーダーをつくる。そのなかで芽生える」と。
「支援活動で一番大事なことは?」「人々の期待を裏切らない。裏切られても裏切らない」
「世界平和に貢献するために、今高校生は何をすべきか?」「世界平和といって他国に関わる者は実はろくなことをしていない。まず身近のところの安全・平和を目指すべきである。いじめをなくす、家庭の平穏、等」
人間としてのスケールの大きさを感じさせる講演であり、質疑応答であった。弱者に寄り添い、権力者に立ち向かって行動している人の、聴講者に元気を与えてくれる講演会であった。(山本和利)