札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年5月19日木曜日

5月の三水会

5月18日、札幌医科大学において三水会が行われた。参加者は14名。大門伸吾医師が司会進行。初期研修医:3名。後期研修医:6名。他:5名。

研修医から振り返り6題。
ある初期研修医のSEA。糖尿病と診断された70歳の女児。感冒で近医を受診。HbA1c:14%。血糖:420mg/dl。BMI:21.これまで検診で異常なし。抗GAD抗体陽性。SPIDDMの可能性もあり。SPIDDMについて発表。高齢発症のIDDMと言えないこともない。
クリニカル・パール:「糖尿病の患者をみて、すべて2型糖尿病と決めつけてはいけない。膵癌の可能性も考える。」

ある研修医。毎日忙しく内視鏡検査、外来、往診をしている。意識障害、痙攣の90歳女性。頻脈があり、慢性心不全がある。口から泡を吹いて呼びかけに反応しない状態で発見された(JCS-300)。除皮質硬直の体位。PO2:50台。痙攣が始まった。血糖、電解質異常なし。腎不全あり。PT-INR:4.6。
てんかん、脳血管障害、低酸素血症を鑑別に挙げた。CTで出血なし。家族は高度医療施設への搬送を希望せず。5時間後、反応がでてきた。左半身の麻痺が顕著になった。誤嚥性肺炎の所見あり、その治療を開始。48時間後、左半身を動かすようになった。「てんかん」ということなのだろうか。仮診断:RIND + epilepsy。
振り返り:「わけがわからないのでお願いします」と書いて、後方病院に搬送することは抵抗がある。何を根拠に転送を決めるのか? 病歴、身体診察だけで判断するのは難しい。
クリニカル・パール:「患者背景を考慮して、どのような対応をするか決めることが重要である。」

ある研修医。50歳代の1型糖尿病女性。網膜症、腎症あり。感冒罹患時にインスリンをスキップしたら高血糖になった。コントロール不良となった。調整をして改善していったが、もう少し早めに調整してあげればよかった。
入院中にコントロールがよくても、退院後にうまくゆくかは別問題ではないか。単にインスリンの打ち方だけの問題ではなく、摂取カロリーも影響しているのではないか。

ある研修医。79歳女性。右肘関節置換術。脳梗塞罹患。低アルブミン血症があり、腹水著明。経管栄養を開始。その後発熱が続き、XPで右肺に浸潤影? 誤嚥性肺炎と決めつけて抗菌薬・補液治療をしたが、心不全であった。思い込みをなくして、常に鑑別診断をしっかり挙げるべきであると思った。
抗菌薬を投与することは、問題はなかろう、という意見が出た。
クリニカル・パール:「診断を早期に決めつけない。」

ある研修医。治療と診断が遅れたイレウスの70歳代男性。自転車に乗って受診。下痢と腹部膨満感。XPでニボー像。絶食・補液で対応。CEA高値。CFで上行結腸までしか入らず。内視鏡施行医は感染性腸炎と診断し、その治療を開始した。生検の結果、癌細胞があることが判明した。
クリニカル・パール:「高齢者の遷延する下痢を見た時には、大腸癌を考慮すべきである。病態を説明できない1つの事項を大切にする。」

ある初期研修医。咳の続く23歳男性。アレルギー性鼻炎、喘息の既往。猫にアレルギーがあるが、猫を飼っている。季節の変わり目、布団の出し入れをした。慢性咳そうを調べた。その原因として日本で多いのは、アレルギー性鼻炎、咳喘息、副鼻腔症候群。北海道に夏型過敏性肺炎はない。経験的には、結核、COPD,百日咳を忘れないこと。

こんな患者がいた。中年肥満男性に起こった咳発作後の数秒の痙攣。診断は、咳による迷走神経失神。

今回は、疾患の診断や治療についての考察が多いカンファランスであった。次回は感情面や患者背景などを考慮した発表がもう少し欲しいと思った。(山本和利)