5月21日、札幌市で開催された日本糖尿病会の「食事療法の新たな展開~食品交換表と糖質カウントをめぐって」というシンポジウムを拝聴した。
<糖質カウント法の考え方とその功罪>
東京女子医科大学の内潟安子氏。「食事内容、時間、間隔、回数に留意する」ことが一番重要である。炭水化物とは、単糖類、二糖類、多糖類(食物繊維を除くべきだが、含まれて表示される)。グルコース以外の単糖類は血液中の糖分という形をとらない。
利点:総カロリーの60%を占め、コンビニ食に表示されている。速く糖分になり、血糖値に反映されるが、速く下がる。交換表の分類に関係なく、一括して考えられる。グライセミックインデックス(調理法の差)を考慮していない。食後高血糖が動脈硬化を促進させると言われるが、高タンパク、高脂質食にするとさらに進む。
欠点:エネルギーにならないグラム数が含まれる。低血糖の危険がある。食物繊維が多い方が血糖は上がりにくい。
<1型糖尿病への適用>
大阪市立大学の川村智氏。良好な血糖コントロールを得るための鍵である。糖質カウント法をしても肥満にはならない。これまで1型糖尿病患者さんは「食べることを我慢していた」糖質カウント法を導入することにより、平均HbA1c;7.3%でまで低下してきている。。
「食前超速効インスリン量は炭水化物量に比例する」が基本である。DAFNE study(2002年)が基本論文である。簡単な覚え方、ご飯1杯=インスリン5単位、2杯=10単位。
コンビニおにぎり120g:4カーボ。
30単位以上の患者さんの場合は次の点が基本である。
インスリン/カーボ比=1.0
インスリン効果値:50(インスリン1単位で血糖値を50mg下げる)
<1型糖尿病以外への適用>
徳島大学の黒田暁生氏。糖質量が変化すると血糖値が変わる。食事量に合わせてインスリンを打つ。摂取する糖質の適量を具体的に患者さんに示す必要がある。一定量の炭水化物をとる。主食の糖質カウントを考える。総カロリーの60%とすると220-240gである。
簡単な計算法。指示カロリー÷20=1食の糖質量。1600カロリーなら80gとなる。
患者さんへの指導として、オカズは病院並みに食べる(20g)。食後血糖値を月10回SMBGをして、その目標値を140mg/dlとする。野菜を先に食べると血糖値が上がりにくいという報告がある。運動により胃排泄が抑制されるようだ。
<糖質カウント法指導の要点>
日本女子大学の丸山千寿子氏。血糖値を異常に上げないことを目指す。糖分だけの食事より他の類が入った食事の方が血糖値は低くなる。炭水化物は差し引き法で計算されている。栄養表示は+-20%誤差が許されている。
<食品交換表の近未来>
京都大学の幣憲一郎氏。交換表は教育媒体であるが、糖質カウントは指導方法である。交換表に糖質量、食物繊維量を盛り込む。別表にする案を検討中。交換表の4版までは、「糖質は一日100g以上」という表現があった。1単位あたり表1のご飯類は平均18gの糖質、表2の果物は20gと思えばよい。各食事の糖質量を平均化すると血糖値の安定化に向かう。目標血糖値を入れるかどうか。カーボよりも糖質という言葉で統一したい。パターナリスティクは表現を修正して欲しいという意見がフロアから出された。エンパワーメント・アプローチが大事である。
はじめて、栄養士や食事療法を中心に研究している医師の講演会に出席したが、新しいエビデンスが多く出てきており、大変臨床に役立つ情報を手に入れることができた。この領域を少し勉強してみたい!(山本和利)