札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年5月12日木曜日

物語と科学の統合

5月11日、教室勉強会で『Integrating Narrative Medicine and Evidence-based Medicine』(James P Meza著,Radcliffe Pubrishing, 2011年)を紹介した。

まず、大事なことはNarrative competenceを鍛えることである。すなわち、患者の語りの中に(患者の)意味付けを見いだすことが必要である。 そのためには、1)聴くこと 、2)Narrative medicineを実践するため、振り返りが不可欠である。

ナラティブとエビデンスの統合方法としてSix “A”sを紹介している。
・Acquire enough information to understand the patient’s concern
語りには意味があると考え、 その意味を明らかにすること、 患者が答えてほしい疑問
(Narrative dilemma)を見分けること。そして、語りと科学を統合し、 患者を苦悩から解放することにつなげる。

・Ask a clinical relevant question
混沌とした語りを答えられる疑問にする、患者が答えてほしい疑問か検討する。
 Patient
 Intervention
 Comparison
 Outcome

・Access information to answer the clinically relevant question
MedlineやGoogle Scholarで検索する。米国では81%の医師がそうしている。そして、21% の医師は患者と一緒にこの結果を診察室で供覧している。そして、一緒にナラティブをつくる。

・Assess the quality of the information
研究デザインを評価する。Case reports, case controlled study cohort study, meta-analysisのどれに当たるのかを。エビデンスのレベルの高さも考慮する。

・Apply the information to the clinical question
診断の文献では、感度/特異度 、有病率(事前確率) 、尤度比 、検査後確率に言及する。

・Assist the patient to make a decision
語りと科学を混ぜる 。検査を依頼する前に検査の意味を説明する。 そして、ナラティブを一緒につくる。

私自身、この10年間、生活者本位の医療をするためには、これまでの経験知を基にEBMとNBMを統合することが重要であると機会を見つけては話してきた。2011年、ついに私と同じ考えを持つ者がそれを一冊の本にまとめ上げた。(山本和利)