5月20日、4年生のEBMの授業は「治療閾値」の復習から入った。その後、治療効果の指標について講義した。
論文を読むときに大事なことは、偶然ではないのか、バイアスがあるのではないかをチェックすることである。3つのバイアス(選択、測定、交絡)を説明した。
治療に関する論文を用いて、次の点を説明した。
エビデンスを正確に評価するためには,治療効果の指標を知らなければならない.そこで、いくつかの指標の計算法を示した.
・・・・・・・・・・・D + ・・D -
Exposure + ・・a ・・・b
Exposure - ・・c ・・・d
相対リスク:Relative risk(RR) は治療薬の偽薬に対する比で表の文字を使って表すと(a/a+b)/(c/c+d)と表される.相対リスク減少率:Relative risk reduction(RRR) は1からRRを引いた値である.表の文字を使って表すと1-{(a/a+b)/(c/c+d)}である.絶対リスク減少率:Absolute risk reduction(ARR)は両群のリスクの差をとった(c/c+d)-(a/a+b)と表される.従来,臨床上の有用性を示す指標として,主にRRRとARRが用いられてきた.現在でも,多くの権威ある医学雑誌の論文ではRRRが用いられている.
しかし,対照と比較した新しい治療法の有用性をRRRで表わすと,たとえば,最終集計時の死亡率が10%対5%も1%対0.5%も,同じように50%と表され,臨床上はわずかな差であっても大きな数字に置き換えられるため,読者に誤解を招きやすい.一方,ARRは純小数で表現されるため,個々の患者に応用しようとする場合に理解しにくい.
それらの欠点を解決するための指標がNumber Needed to Treat (NNT)である.NNTは1をARRで割った値をいう.対照となる治療ないし自然経過に加えて1例の効果を観察するためには,その治療を何人の患者に用いなければならないかという指標に置き換えられたことになる.
相対リスク(RR)はその薬剤の切れ味を表現している。自分の患者さんについて評価するときにはARRとNNTを使う方がよい.そうすることにより,1人の患者を救うためにどれだけの費用と薬が必要なのかがより明確になる.
治療法の効果の評価の際には、相対リスク(RR)だけでなくARR,NNTも計算すること。(山本和利)