今日は、医学部1年生に医学史の講義を行った。
講義と言っても自分がするのではなく、学生が5-6人の班になり、1人の医学史上の人物について調べてきて授業時間内に発表を行うという形式である。これまでの2週間で、『プレゼンテーションのコツ』や『ファシリテーションのコツ』の授業をやってきたので、その内容をどこまで学生が汲みとってくれていたか楽しみな授業であもる。90分間に2班が発表する。
本日は
医学の始まり 『呪術』と『ギリシャ医学』であった。
呪術の班は、冒頭、「医学史の最初を飾る発表が、うさん臭い「呪術」でいいのか?」と問題提起があったあと、日本やアジア・アフリカ・ヨーロッパの呪術についての発表があった。
なかでも、日本の厄年についての調査が北海道大学で行われていたというのは面白かった。厄年の人とそうでない人の本人とその家族の死亡率を調べたところ、統計学的な有意差は全くないとのことであった。当たり前といえばあたりまえだが、数字で示されると、深く納得してしまう。しかし、日本では『お祓い』という行為によって、心の安寧秩序が保たれているのであるとのことであった。なるほど。
その他、各地域の呪術的なものであっても現代に深く根づいているものもあるとのことであった。
ギリシャ医学の班は、ギリシャ医学の中でも特に特徴的なヒポクラテスを取り上げ、ヒポクラテスが登場するまでの医学(=呪術)とヒポクラテスの医療についてとその後の影響について調べたようだ。
特に、「ヒポクラテスの誓い」は9項目であるが、現代の医療倫理にも深く影響を及ぼしているようだ。有名な「Do No Harm」の精神や、医療に差別がないことなどを取り上げていた。しかし、現代の医療環境にそぐわない部分も出てきたため、現在「もはやヒポクラテスではいられない(=もはヒポ)』プロジェクトなるプロジェクトがあり、現代版ヒポクラテスの誓いをつくろうという動きがあることを紹介していた。
その他、日本医師会の作成した、医の倫理マニュアルに『ヒポクラテス』の文字が11回も登場していることを引き合いに、その影響力を紹介していた。
発表は2班ともきっちり30分で終了し、しっかりと準備してきていることをうかかがせた。
とくに、スライドそのものは非常に工夫されており、各種アニメーションを駆使したり、画像を織り交ぜたりして、よくありがちな『スライデュメント』(スライド+ドキュメント(文章)の箇条書きスライドのこと)はほぼないに等しい状況であった。
なにより松浦が感動したのは、プレゼンテーションの講義で最も強調した、「口でしゃべる内容を原稿にするな!」ということをしっかりと守り、スライドの『魅力的な』タイトルを見ながら、自らの言葉できちんと発表できていたことだ。誰一人、原稿を読んでいる人はいなかった!!
発表後の質疑応答では、別の班に会場をファシリテートしてもらったが、ファシリテーションの授業で紹介したバズセッションを取り入れて、積極的に発言を促していた。
ここで出てきた意見も、きちんとPNPフィードバックに基づいてきちんと発言できていた。まだまだぎこちないところもあるが、これから慣れていくであろう。
講義後の学生の感想は、単に発表内容に関するものだけでなく、プレゼンテーションの仕方・スライドの作り方に関わるところに言及した感想が目立った。
松浦がこれまで見てきた(自分が学生時代に受けた講義も含めて)学生に発表させる形式の授業の中では最も盛り上がったものであったと思う。今後発表予定の班は他の班の発表などを参考にしてすこしずつ工夫をしていくであろうし、確実にプレゼンテーション技術は向上してくであろう。
学生諸君に、多少なりとも影響のある授業が出来ていたんだと確信した。
今後の授業がとても楽しみだ。教育の仕事は面白い!
(助教 松浦武志)