『無縁社会“無縁死”三万二千人の衝撃』(NHK「無縁社会プロジェクト」取材班編、文藝春秋、2010年)を読んでみた。本書は、NHKで放映されたものを活字化したものである。
「行旅死亡人」という言葉を本書で初めて知った。「住所、居所、もしくは氏名が知れず、かつ遺体の引き取り者なき死亡人は、行旅死亡人とみなす」ということである。現在はそんな「行旅死亡人」が増えている時代であるという。アパートの一室でひっそりと亡くなっている者、水死体で上がる者、等。そんな中から記者たちが身元や過去の軌跡を求めて記事にしている。引き取り手がなく、埋葬もままならない遺体のかなりの数が献体となって医学部での解剖実習に回されている。最終章では、絆を取り戻すための人生を送った人のレポートが載せられ、少しの救いもある。
東北・関東大震災に被災しながら品格を持って、飢えや寒さに耐えている日本人の姿がテレビ画面に映し続けられている。各地から援助の手も続々と挙がっている。日本は無縁社会ではないと思える映像である。水、食料、ガソリン、電気を失っても絆を大切にする日本人に、復興への希望を感じた。(山本和利)