『ふたつの嘘』(諸永裕司著、講談社、2010年)を読んでみた。
米軍占領下にあった沖縄の返還を巡る嘘についてのことが書かれている。
一つ目の嘘。1972年、毎日新聞記者であった西山太吉氏が密約を追求したところ、女性事務官を籠絡して情報を手に入れたという話にすり替えて国家公務員法違反で逮捕された。その夫人が40年の歳月を経て口を開いた。当時の日記を挟みながら記事は進む。沖縄の軍用地を原状回復させるための400万ドルを日米のどちらが払うのかの交渉が最終段階でまつれ、米国が自発的に払うと明記させたが、日本側が肩代わりするとしか読めない内容であった。その追求に国会で若き横路孝弘が立つ。これが元で西山氏は新聞社を退職し、佐藤栄作氏はノーベル平和賞をもらった。裁判の一審は無罪、その後、密約が問われることなく、争点は男女関係に絡んだ取材方法に限られ二審、最高裁で逆転有罪となる。その後、ギャンブルに走る夫。20005月29日、密約を裏付ける資料が出た。
後半は二つ目の嘘。「情報は誰のものか」を問う弁護士、小町谷育子氏の話。密約を裏付ける資料を琉球大学我部政明教授が米国で発見。
裁判で国は嘘を認めるのか。自民党から民主党に変わって国の姿勢は変わったのか。真実を暴くには戦い抜くしかないのだろう。
東北・関東大震災による福島原発の放射能漏れ事故について、政府広報に嘘がないことを祈りたい。(山本和利)