『葬送流転人は弔い、弔われ』(星野哲著、河出書房新社、2011年)を読んでみた。本書は、朝日新聞に連載されたニッポン人脈記「弔い 縁ありて」を全面的に書き換えたものである。
時代とともに葬儀の在り方も変わってきているようだ。無縁社会が蔓延して亡くなっても家族が遺体や遺品を引き取らないことが増えている。そこで登場したのが遺品引き取り業である。葬儀を生前に行う例、イエ制度を離れて永代供養契約をする例、散骨、樹木葬、エンバーミングなどのことが記述されている。
「遺体はまだ生きている」の章では、日本人の遺体に対する独特の思いが記されている。完全な身体がないとあの世で死者が不自由を強いられるという思いがある。映画「おくりびと」の裏話や主演した本木雅弘氏と原作となった『納棺師日記』の作者青木真門氏との交流も記されている。日本の葬式代は高いのか、低いのか。
テレビでは東日本大震災で瞬時に多数の死者が出たことを報じている。被災者は天災を淡々と受け入れているように表面上見える映像が流れてくる。きっと表情に表わさない悲しみが鬱積しているはずである。このやり場の気持ちをどこにもってゆけばいいのか。(山本和利)