3月4日、東京にある都道府県会館において鹿児島大学主催で行われた地域医療実習の実践シンポジウムに参加した。はじめに鹿児島大学の獄崎俊郎離島へき地医療人材育成センター長の挨拶があり、続いて岡山雅信自治医科大学准教授の「地域医療マインド醸成のための地域医療実習のあり方」という講演を拝聴した。
地域医療マインドとは次のようなことを満たそうとする気持ちである。地域医療マインドを持った指導医の背中をみながら共に体験し、地域のニーズを直接肌で感じることが重要である。
「地域医療」とは、住民の健康問題のみならず、生活の質にも注目しながら、住民一人一人に寄り添って支援していく医療活動である。「切り取らない」ことが大事。
「今なぜ地域医療か」高齢者社会の到来、医療費の高騰、等、多様化している。「医師の役割」幅広い領域・分野に対応しなければならない。診療所医師の業務は、主に外来、予防接種、介護、在宅医療、学校医、各種健診業務である。幅広い医療の提供と住民との良好な人間関係の2つが受診者の満足度に影響している。
「地域で高い評価を得る医師の姿」は、幅広い医療の提供、住民との良好な人間関係、初期救急医療の提供、保健・福祉の実践、医療機関の健全な経営、である。
自治医大のカリキュラムは、低学年から臨床との関連を重視、2年間の臨床実習、全診療科の実習をしてきたが、今後は次の「地域医療の教育の3要素」を強調する(地域医療に対する心構え・意欲・使命感の醸成、地域医療システムの理解、基本的な診療能力の習得)。1998年から選択から必修に変わった。1999年、質を保証するため、各県に臨床講師制度を設け、学生の出身県で行うことになった。指導医の熱意は重要である。地域医療の楽しさ、やりがい、喜びを学生が味わえる内容でなければいけない。2001年、病棟実習以外の内容を取り入れた「標準プログラム」を提示した。日本において地域医療実習については、2003年、大学外での実習が提案された。世界の流れを見ると1987年、WHOのレポートにcommunity-based educationの勧告が出されている。
事前に集計した地域医療実習教育に関するアンケート結果の発表があった。何らかの実習が行われているのは87%。実施項目数は大学に差がある。健康教育、予防接種の実施率は50%以下であった。
その後、各大学の取り組みとして、札幌医大、長崎大学離島・へき地医療学講座前田隆浩教授、岡山大学地域医療人材育成講座佐藤勝教授、筑波大学地域医療教育学前野哲博教授から発表があった。私も札幌医大を代表して発表を行った。札幌医大のポートフォリオのフォーマットを送って欲しいという意見が数大学から寄せられた。長崎大学は3コースがあり、歯学部、薬学部も他大学からも受け入れている。参加者数が急上昇。暮らしに近い医療の体験が売り。画像の遠隔診断はドクタヘリの導入に伴い頻繁に使われるようになってきた。最後に、総合討論が行われた。(山本和利)