札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年3月17日木曜日

ベッドルームで群論を

『ベッドルームで群論を』(ブライアンヘイズ著、みすず書房、2010年)を読んでみた。

数学の専門家ではない著者が書いた、興味深い数学の話である。タイトルになっているベッドルームで群論とは、ベッドマットレスの位置を変える方法について述べながら、群論を語る流れになっている。

本書は12の話題を取り上げている。科学的なバイアスのない割り付けにランダムさは常用であるが、その「無作為さ」を作り出すのが難しいようだ。お金の考察も面白い。税金や福祉をはじめとする収入の組織的再分配方法がどうような効果をもたらすか。富める者に税金をかければフリーマーケット経済の破綻は確実に防げる。コンピュータ・シュミレーションで、取引のたびに一定割合の富を所得税として徴収し、それをすべての当事者に均等に分けることにする。すると税率が低いあいだは破綻を防ぐことができなかったが、税率が15%を超すと、経済は破綻せずに永遠に続くように見えたそうだ。これからすると、日本の消費税も15%くらいがよいのかもしれない。DNAの二重螺旋構造の解明のプロセスも興味深い。戦争に関する統計解析から、戦争がいつどこで勃発するか予測できるか(できないそうだ)。歯車の歯の数を計算するアルゴリスムを模索し、時計職人達の思考の跡をたどる。現在、コンピュータは2進法、人間は10進法を用いるが、それ以外の3進法の魅力を追う考察もある。

初めに書かれてから数年後に「後から考えてみると」という文章を追加して、それぞれのテーマについて読者の反応やその後の情報を追加している。数式を見ることなく数学的思考に触れることができるので、医学で疲れた頭脳にとって気分転換になるかもしれない。(山本和利)