『TOKYO一坪遺産』(坂口恭平著、春秋社、2009年)を読んでみた。本書は、建築家でありながら建物を建てるよりもリフォームに興味を持つ著者が、路上の小さなスペースを有効に使っている場面を12に絞って報告している。
パラソル下の靴磨き屋、宝くじ売り場、隅田川の0円ハウス、中野のパーキングガーデン、等。そこに足を運んでその場の空気を感じて、絵を描き、インタービュをしている。
お金はなくとも狭い空間を工夫して過ごしやすくしている「一坪遺産」の持ち主への、著者の愛情と敬愛の念を感じる。著者自身が描いている妹尾河童氏のそれと似た挿絵も素晴らしい。
本書を読んでゆくと、狭い空間の方が中途半端な空間より快適なのではないかと錯覚しそうになる。日頃、部屋が狭いと嘆きながらも乱雑な中で生活している私には、部屋のあり方を再考する契機となった。(山本和利)