第7章の検査の中盤 Patient-centred diagnostic testing
IBSについて
過敏性腸症候群は、IBD、感染や大腸がんを除外して、典型的な症状に基づいて診断を試みる、診断基準にはManning criteria とRome criteria がある。患者は、リスクのある検査に関心を払う。例としては大腸内視鏡は0.4から1.2%の合併症のリスクがあり、致死的なリスクは0.01%である。さらにアメリカにおいては800万ドルの過剰なコストがかかっている。Suleimanらはベイズの方法でIBSの診断法を適用した。5%の事前確率だとすると大腸内視鏡を用いないで非侵襲的な病歴、身体診察、便潜血、CBC、甲状腺などの生化学検査などにより事後確率は80%になる。
パーキンソン病について
パーキンソン病であると一目見てわかる男性がいた。歩行困難、仮面様顔貌、震戦がみられていたが、パーキンソン病である告げたが妻は失望して私にこういった「あたたはパーキンソン病だと告げた4人目の医者で、神経内科医からの手紙を渡してくれた…」75%のパーキンソン病では静止時震戦がみられ、教科書にはピルローリングなどの記載があるが、パーキンソン病と症候群の鑑別は専門医でも困難である。病理結果からみると25%は誤診されている。その結果、治療は不適切なものとなり,患者に対して社会的不適応を作り出してしまっている。本当にパーキンソン病の診断は難しい!?
震戦でパーキンソン病の診断に至った例は、LR+1.3で硬縮と寡動でも2.2にとどまっている。驚くべきことにレボドパでの改善例は僅か1.4である。65歳以上でのパーキンソン病の事前確率は1%で問診、身体診察で疑っても20%である。その他疑うべき兆候の報告はあるが、信頼性は乏しい。最近パーキンソン病の診断は、SPECT、DaT(ドパミン輸送体)SCANに置き換わって来ている。DaTSCANのパーキンソン症候群と本態性震戦の鑑別の感度は97%で特異度は100%である。プライマリケア医は、このような特異的検査について患者主体の診断学の視点から関心をもっておくべきである。
DVTの診断
DVTの診断はプライマリケアにおいて特別な意味合いを持っている。最近のメタアナリシスでは、悪性腫瘍でLR+2.7、以前にDVT既往があればLR+2.3最近に手術既往があればLR+1.8と有益なエビデンスがある。しかしながらこのような尤度比がつかえなければ、除外診断の為にコストのかかる画像診断に頼ることになる。またDダイマーは手術、外傷、がん、妊娠などと同様にDVTの診断に有益な情報をもたらす。Dダイマーが陰性の場合はDVTの陰性尤度比0.20であるので事後確率を算出する際に重要である。プライマリケアにおいて修正WellsスコアがDVT診断にプライマリー領域で有効である。
迅速な診断のために
患者主体な迅速検査は、すぐに検査結果が得られることそれが患者ケアに役立つことである。今までの検査に比べて分析時間、報告時間が短縮されている。ERなどの報告によると7%の改善率にとどまっている。出来る限り心筋梗塞を疑う患者対応にプライマリケア医として迅速検査は重要と考えている。心筋梗塞の患者はECGが正常でCPKも正常でも偽陰性の場合があることをよく知っているので、心筋梗塞のトロポニンの感度は、2時間で33%、8時間後では86%であり、適切な対応が可能となる。
質の保証はどうするの?
プライマリケア医は臨床診断を行う際に検査について信頼性、確かさについて疑問をもつが、プライマリケアの視点での研究は少ない。
外来患者や学生などの健康で限られた対象者でのコフォート研究である場合が多い。このことは進行性し全身に広がった疾患では陽性になることがあるが、そうでない場合は陰性所見となってしまう。患者主体の視点から検査機器は理想的な状態のデータを提供するだけではなくて、プライマリケア領域から集められたデータと提示できるようにすべきである。
検査結果の信頼性は内部と外部的な質のコントロールにより、内部的質のコントロールとは、診断基準などの日々の診療に基づく検査データをどのように適応していくかにかかっている外部的質のコントロールとは迅速検査と検査機関からのデータを統合する形となる。これからいかにデータを統合するかにかかっていると言える。プライマリケア領域では簡易検査は質の保証についての関心が強い。その例としては8年以上アメリカでの血糖測定器の問題により24名が死亡し986名が影響を被った例がある。しかし検査機関での検査結果の信頼性についても疑問を持つべきなのかもしれない。検査結果はデータが戻るまでには経過のなかでの不確かさがある。
プライマリケア領域での検査について以上のような視点での研究は必要ですね。(寺田豊)