『ミツバチの羽音と地球の回転』(鎌仲ひとみ監督:日本 2010年)という映画を観た。
原発建設反対を28年間にわたり訴え続ける瀬戸内海の祝島(いわいじま)の島民の姿を追ったドキュメンターである。
6月18日は震災100日目だそうだ。この日、懲りることなく、海江田経済産業大臣が停止中の原発の稼働を促す発言をし、原発立地県知事たちや住民から猛反発を浴びている。そんな中で観た映画である。
映画は監督で決まる。鎌仲ひとみ氏の作品は必見である。TVでは『エンデの遺言‐根源からお金を問う』、映画では『ヒバクシャ‐世界の終りに』、『六ヶ所村ラブソディ』を作っている。『エンデの遺言‐根源からお金を問う』はTVドキュメンタリーの中では3本の指に入る傑作である(YUTUBEで見ることができる)。
海藻を採る男女。ヒジキを干すおばちゃん。枇杷を作る青年。米を作る老夫婦。島での生活のための様子が丹念に撮られている。そんな島での生活の合間に、対岸や東京に出向いて原発反対運動に邁進する。海や山の幸を大切にして、第一次産業で生き残ろうとする住民と、先行きのない「老人の島」として切り捨てようとする国家と中国電力の闘い。その中での無償で28年間継続して闘う住民パワー、特におばちゃんパワーには圧倒され、感動する。笑いと涙で顔がクチャクチャになる。
映画の中では、原発建設を一日でも先に引き延ばそうと島民が奮起しているが、田ノ浦に上関原発建設許可が下りたという映像が流される。しかしながら、2011年3月11日の福島第一原発の事故後、風向きが変わったように思う。彼らの思いが叶うよう祈りたい。
映画の中間で、持続可能な社会を目指す人々としてスエーデンのオーバートーネオ市のことが紹介されている。スエーデン一のへき地で地域自立型エネルギー政策を実践している。非常にうまくいっているらしい。またスエーデンではきれいなエネルギーを自由に買う保証もなされている。日本は一社独占である。ここより日本の自然資源(風力、地熱、等)ははるかに恵まれているので、是非参考にして日本でも取り入れてほしいと思った。
大変素晴らしい映画なのに観客が私と妻を含めて6名しかいないというのが少し寂しい。多くの人に是非この映画を観ていただきたい。文藝エロス路線を一時中断してまでこの映画を上映してくれたこの映画館を何としても支援したいものである!(山本和利)