6月23日、松前町立松前病院の木村眞司院長の地域医療合同セミナーI~IIIで企画したランチョン講義を拝聴した。講義のタイトルは「松前町立松前病院の挑戦」である。
まずは軽く自己紹介。北海道生まれ、北海道育ち。空手道部、スキー部。様々な研修をして2005年から松前町立松前病院で家庭医・何でも科医で働いている。ここで松前町の紹介に移る。北海道最南端。函館まで95km、救急車で1時間半。松前名物「あん五目ラーメン」の紹介。北海道の地方の医療の充実。家庭医・総合医の養成が目標。
全科診療医が診る範囲。
内科、小児の疾患、外傷や整形外科的疾患、精神疾患、等。朝7時半開始。医師の紹介。「松前塾」。
医師の一日・一週間を、写真を使って紹介。
朝礼、外来風景を紹介。書類の決裁。病棟回診。症例カンファランス。診療録チェック。医局勉強会。老人ホームの回診。医師看護師連絡会議。透析室ミーティング。病棟カンファランス。研修医と回診。松前ケア会議。レセプト点検。ときに当直。繰り返しである。消耗することもあるが、単調の中に喜びを見出す。
「プライマリ・ケア・レクチャー・シリーズ」:インターネットで日本中をつないでカンファランスを行う。札幌医大情報センターが支援している。全国65か所が参加。遠くにいることを感じない。
学生や初期研修医の受け入れ。松前家庭医研修プログラム。
いろいろな職種の紹介。ほぼ地元の人である。看護師は慢性的不足である。派遣の看護師をお願いしている。病棟業務が精いっぱい。PT,OT不足である。病院は様々な人たちによって支えられている。大切なことは面倒くさがらず意思を伝える。
トップとして考えること
・トップが方向性を示す。
・お仕着せは根付かない。
・自分たちがやりたいものでないとうまくいかない。
・時間をかける。
松前病院が目指すもの
・もっとup to dateに
・寝かせきりを少なくする
・医療従事者が研修したくて行列ができるように
・リハビリができるように
・もっと素敵な病院に
最後に学生さんに考えてもらいたいことを述べられた。「前向きにとらえて、前向きに努力すること。」
学生からの質問:
Q1.地域医療の現場で赤字を解消するには。
つぶれない・発言力を持つためには「目先の黒字を追っかける」ことになる。日本は出来高払い制。一人当たりの単価は上げない方針をとっている。病床利用率が下がると赤字につながる。全体としてみると、このような姿勢が日本全体の医療費を押し上げている。難しい。
Q2.全科診療医になるにはどうしたらいいか。
よくある疾患をよく診るという覚悟も必要。幅広く診るための研修・環境が必要。
Q3.今の医療とは?
標準的な知識・技能・態度をもつということを目指したい。
1年生を中心に様々な科の学生が熱心に聴講してくれた。(山本和利)