札幌医科大学 地域医療総合医学講座
2011年6月17日金曜日
富山大学地域医療支援学講座
6月16日、富山大学医学部で開催された地域医療支援学講座主催(有嶋拓郎教授)の勉強会で講義をした。
この前に富山大学の総合診療部と救急部が主催している複数の地域支援病院との間で行っているテレビ会議に参加した。
座位で失神、痙攣を起こす中年女性事例と関節痛と軽い浮腫で受診した中年女性事例であった。最終診断は「血管迷走神経性失神」と「SLE」であった。病歴と身体所見からどこまで診断に迫れるかを試みる有意義な勉強会であった。
講演では、まず医学教育における視点の変化(ロジャー・ジョーンズ、他:Lancet 357:3,2001)を紹介した。研修医、総合医には、持ち込まれた問題に素早く対応できるAbility(即戦力)よりも、自分がまだ知らないも事項についても解決法を見出す力Capability(潜在能力)が重要であることを強調した。その根拠として、Shojania KGの論文How Quickly Do Systematic Reviews Go Out of Date? A Survival Analysis. Annals of Intern Med 2007 ;147(4):224-33の内容を紹介した。効果/治療副作用に関する結論は,系統的レビューが発表後すぐ変更となることがよくある.結論が変更なしに生き延びる生存期間の中央値は5.5年であったからである。(5年間で半分近くが入れ替わる)
N Engl J Med の編集者Groopman Jの著書 “How doctors think” (Houghton Mifflin) 2007を紹介。60歳代の男性である著者が右手関節痛で専門医を4軒受診した顛末が語られている。結論は“You see what you want to see.”(医師は自分の見たいものしか見ていない)。
その中でbiopsychosocial modelの提唱者のGeorge L. Engelを紹介。(he need for a new medical model: a challenge for biomedicine. Science 1977;137:535-44)
最近の理論Joachim P Sturmberg ( The Foundations of Primary Care)も紹介。
後半は、「外来における研修医指導のための5つのマイクロスキル」を紹介した。マイクロスキルは5段階を踏む(考えを述べさせる、根拠を述べさせる、一般論のミニ講義、できたことを褒める、間違えを正す)。腹痛、血尿を訴えるシナリオで具体例を示した。
講義後、たくさんの質問をいただき、参加者の関心の高さを窺わせた。今回は新たに診療所実習を受け入れる指導医の方々が参加している。富山大学の臨床実習がさらに充実することを期待したい。(山本和利)