札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年6月29日水曜日

食の問題

6月29日、地域医療支援学講座主催のプライマリ・ケア・レクチャー・シリーズで番外編講義(医療以外のテーマ)をした。

3本の映画を紹介した。まず、『キング・コーン』アーロン・ウルフ監督:米国 2007年。米国の二人の若者がアイオワ州に移り住み1エーカーの土地を借りてトウモロコシ栽培に挑むドミュメンタリー映画である。

 “コーン”は、過剰栽培であること、食べても不味く牛の飼料に回していること、さらにコーンシロップの材料に回ること、清涼飲料水に大量に含まれていること、それが原因で米国の肥満・糖尿病の原因になっていること、農家の人たちは自作のトウモロコシを食べないこと、コーン栽培のほとんどを石油に依存していること、等がある。栽培農家の収支を計算すると赤字になるが、政府から制裁策として補助金がでるため何とか農家がやっていける。米国の食料の源はほとんどがコーンにたどり着く。化学肥料並びに農薬、遺伝子組み換え、政府の補助金、健康問題なども扱っている。農業者が誇りを持てない米国農業(「我々農家はカスを作っている」)は病んでいる。大企業の関わりについてこの映画では全く触れられていない。

『ありあまるごちそう』エルヴィン・ヴァーゲンホーファー監督:オーストリア 2005年(著書もある)。

徹底した利益追求と経費削減が世界中に蔓延し、需要の供給のバランスを崩し、世界中で貧富の差が広がっている。人類は今や120億人を養えるだけの食料を生産しながら、毎日10万人もの人が餓死し、10億人が栄養失調になっている。世界中の大都市で大量の食糧が毎日捨てられている。日本人が廃棄している食糧(一般家庭から1100万トン:2005年)は、途上国の約5000万人分に匹敵する。ブラジルのある地区では食べ物がなく汚れた水を危険と認識しながら摂取している。一方で、まだ食べることのできるパンが毎日山のように棄てられている。
 映画は漁業や農業、酪農等の生産現場に密着して、レポートされている。何万羽もの鶏が生産ラインにのって消費者にわたる形の商品になるまでの10分近く続く流れ作業が生々しい。東日本大震災の被災地のような状況が世界の各地で日々続いているのだ。この原因は大部分、政治的な誤り(アマルティア・セン)であるといわれる。

『フード・インク』(ロバート・ケナー監督:米国 2008年)。

多国籍企業が政治家を取り込んで、食を独占できるように法制化して、健康に悪い食品を安く提供するシステムを形成している。メキシコの大豆農家を破綻させて、彼らを不法入国者と知りながら低賃金で3K労働に従事させる。遺伝子組み換え大豆以外は栽培できないような法制化された米国の農業、等々。

これに対して我々ができることは
・労働者や動物に優しい、環境を大事にする企業から買う
・スーパーに行ったら旬のものを買う
・有機食品を買う
・ラベルを読んで成分を知る
・地産食品を買う
・農家の直販で買う
・家庭菜園を楽しむ
・家族みんなで料理を作り、家族そろって食べる
・直販店でフードスタンプが使えるか確かめる
・健康な食品を教育委員会に要求する
・食品安全基準の強化を議会に求める

メッセージ
「システムを変えるチャンスが1日に3回ある。世界は変えられる。ひと口ずつ。変革を心から求めよう。」「放射能汚染だけでなく、日常の食に関心を向けよう。」(山本和利)