札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2011年6月24日金曜日

データからみる医療事情

6月24日、松前町立松前病院の八木田一雄副院長のランチョン講義を拝聴した。講義のタイトルは「データからみる医療事情」である。学生参加者は4年生が1名、3年生が3名、1年生が3名。

はじめに医師不足についての時代背景を説明。新医師臨床研修制度導入され、医師供給システムが激変した。民間病院、後期研修に入る人が増えた。北海道内は内科医が不足している。派遣医師の引き上げ、偏在、科による医師不足がある。原因として、労働過重、医療訴訟、高度医療化、都市化、立ち去り型サボタージュ等が考えられる。世界の基準でみると絶対的な医師不足。これまで医学部入学定員8000人が、急遽増やし8800人となった。

医師数は224.5人/ 10万人[2008年]北海道は全国平均並である。小児科は増えているが、産婦人科は減っている。70歳代は10%。女性医師が増えている。人口は現在1億2700万人であり、2025年に医師数は1.32倍になる。参考として看護職員は増えている。

道内では医師数は224.9人/10万人。一般内科が減っている。小児科は増え、産婦人科は減っている。ただし、札幌圏に集中している。女性医師は13%。診療所数が増えて、病院が減っている。これは開業医志向を反映している。

OECDのデータ。医師数は2.2人/1000人。急性期病床は世界一。CT,MRI保持率は世界一。医療費は平均以下。平均寿命は世界一。自殺率は3位。肥満率は高くない。喫煙率は4位。年間診察回数は多い(13.8回/年)。少ない医師で多くの患者を診察している。入院日数が長い。

死亡率:癌が第1位。次いで、心疾患、脳血管疾患、肺炎。平均余命:男性は79歳、女性は86歳。医療費は30兆円で、そのうち70歳以上の費用が50%を占める。

日本は国民皆保険、フリーアクセス、現物給付、医療機関は非営利・民間主体、一律の点数表による価格統制である。比較として英国、米国の医療制度を紹介された。

受療行動としてWhite K.の住民健康調査データを提示。

学生の質問:
Q.地域医療の現場で小児科専門医になれるのか。

地域でも十分にやりがいはある。可能ではある。ただし、若者の地域居住数が減少し、子供の数も減っているため、需要が少なくなっている。小児を小児科医しか診ることができないことを前提にしている専門医制度に問題がある。小児受診者の95%は軽症例であり、その患児を総合医・家庭医が診るシムテムにすれば、小児科医は残りの5%の重症例だけを診ればよいことになり、小児科医の労働条件も改善される。しかしながら、このような意識改革が行政にも医師にも住民にも浸透していない。総合医・家庭医のレベルを上げて、我々の活動を通じて啓発してゆきたい。

医療事情について医学生時代から知っておくことは大切なことである。(山本和利)