4月26日、札幌医科大学大学院修士課程に入学した方を対象に「臨床疫学入門」という講義を行った。参加者は9名で医学以外の様々な背景をもった人たちである。
はじめに科学とはどういうことかについて宇宙論を例に解説した。その特徴は1)実験、2)理論(二元論、要素還元主義)、3)反証性、にある。科学が背負う問題として、論文捏造について紹介し、科学社会の構造的問題について説明した。
「暮らしの手帖」を例に科学的な姿勢について解説した。PICOについて解説し、臨床研究のプロトールの書き方などを紹介した。
その中で、糖尿病に関するACCORD研究(厳格な血糖コントロールを目指した群の方が生命予後は悪かった)と二十世紀最良の論文と言われるCAST(Cardiac Arrhythmia Suppression Trial)studyを紹介した。(心筋梗塞は急性期が過ぎてから合併する不整脈が時として致死的となるため、抗不整脈薬が有効であるという理論・予測があり、抗不整脈薬が予防的に投与されていた。しかし、最も有効な薬剤グループを調べるためにランダム化比較試験による臨床実験が行われところ、中間報告で最も死亡率の低いのは薬剤非投与群だったことが判明。安全のために試験の一部が打ちきりとなり、以後は抗不整脈薬が一律に投与されることはなくなった。)
後半、臨床研究のプロトコールに作成法や統計の話、研究のデザイン・バイアスについて言及した。
参加者からは、「もう一度講義を受けたい」「PICOが今後の研究生活に役立ちそうだ」「文系出身者には難しかった」等の意見をいただいた。(山本和利)