『暗殺国家ロシア 消されたジャーナリストを追う』(副田ますみ著、新潮社、2010年)を読んでみた。
ソ連崩壊後、エリチィンの時から腐敗が目立ち、プーチンになってから彼の悪口をいうことが出来ないような独裁国家になっていることが記されている。もしもこの暗黙の了解を破ると罷免または死(暗殺)が待っている。
現代のロシアにはチェチェンの独立問題が色濃く反映されている。チェチェン共和国は北カフカスでも有数の石油産出国であり、カスピ海の油田パイプラインがチェチェン共和国内を通過している。そのため、ロシアにとっての利害が大きくてチェチェンを独立はさせられないのである。
本書の後半は、ベスラン学校占拠事件について、ロシア当局の対応、報道に関するひどさが暴露されている。それに関わる『ノーバヤガゼータ』の若き女性新聞記者の活躍と心意気が素晴らしい。「もし私が殺されても、『ノーバヤガゼータ』の同僚達がそのあとを引き継ぐでしょう」と。ロシアでは、政権に楯突く者には死が待ち受ける。プーチンが大統領に就任した2000年から2009年までに、120人のジャーナリストが不慮の死を遂げているのである。プーチンの腰巾着となって享楽を貪る堕落したジャーナリストと命がけで国民に情報を開示しようとする一握りのジャーナリストの対比がすさまじい。
日本にあっては、自民党が政権をとろうが民主党がとろうが、私たちが何を主張しようしようと命を取られないという意味においては幸せなのかもしれない。(山本和利)