『感染宣言 エイズなんだから、抱かれたい』(石井光太著、講談社、2010年)を読んでみた。
米国で最初のエイズ症例が発見されたのが1981年。日本では2009年に新規感染者は1,021名である。本書は2008年に9ヶ月かけて行ったHIV感染者とその家族への調査の結果、書かれたものである。現在進行形で恋愛パートナーが居る率は60%、感染を告げている率は50%であった。
様々な人生が書かれている。第二章は、血友病製剤でエイズになった男性と結婚相手の結婚に至るまでのそれぞれの家族の思いが生々しく書かれている。
第三章はHIV患者のDVを繰り返し離婚係争中に自殺した例を取り上げている。
第四章は、ゲイであることを隠すために偽装結婚をして、隠れて男性とつきあいながら感染した男性とその夫人との結婚生活。
第五章は、HIVに感染しながら子供を生んでたくましく子育てをしている夫婦を描いている。
「エイズは男女にとって大切なところに忍び込み、彼らを極限状態にまで追い詰めます。」という言葉が、何となく生きている私の胸を刺す。(山本和利)