6月10日は4年生を対象に「EBMと臨床研究」という講義の最終回である。
医療の内容を科学的に説明しようとする場合、どうしたらよいか。極論するとy=ax+bという一次関数にしたモデルで考えるということである。
多重ロジステック回帰分析を例にとろう。健康でいる率をY軸、喫煙年数をx軸にとるとS字型をとる。それを一次関数(直線)にしようとするには、Y軸の健康でいる率をオッズに変換してグラフを書くと指数関数に近くなる。そこでそのオッズをさらに対数にすると何と直線になるのである。
そして現象がどのくらいその直線に乗るかみるのが寄与率である(このことを論文などで一生懸命表現することになる)。このような多変量解析を用いて計算しても、生身の人間を対象とした研究では相関係数はせいぜい0.5にしかならない。つまり統計学的には、寄与率は0.5×0.5=0.25であり、人間を対象にした場合25%しか説明できないのである。とは言え、科学的であるためには、絶えず勉強して25%の科学性を確保する努力が必要であることを強調した(人間性だけでは宗教と変わりがないことになる)。
後半は「ハチはなぜ大量死したのか(Fruitless Fall)」、「奇跡のリンゴ」(石川拓治著:幻冬舎 2008年)など、科学的に農業に取り組む話をした。
学生からは思ったとおり、後半の医学以外の話に対する評価が高かった。13回に分けて行った授業については、思いの外、好意的な意見が寄せられていた。(山本和利)