6月5日、第6回青森県総合診療学術フォーラムに呼ばれて講演をした。2年前に呼ばれたときに「EBMの過去・現在・未来」と題して講演したので、今回はそれにNBMの話を加えて、医療のあり方について講演した(「EBM と NBM」)。弘前大学医学部付属病院地域医療支援センター長・総合診療部教授の加藤博之先生が約10名の医学生を引き連れて聴講してくれた。医療を科学的に展開することは大事であるが、エビデンスは日々刻々変化するものである。最近の報告では約5年間で半分のガイドラインが書き換えられると言われている。様々な人間を対象とした臨床研究ではしっかりとした研究計画に則った研究であってもその成果の25%しか説明できないこと等を解説した。その中で「なぜハチが大量死したか」を科学的に追及した本を紹介した。今回は青森ということで青森県岩木町に住む木村秋則氏の無農薬リンゴ栽培にのめり込んでゆく生き様(「奇跡のリンゴ」)を、科学的な農業実践の例として紹介した。
講演の後半は、科学的に説明できないことについては、人間的・物語的に対応することが大事であること、そしてプライマリ・ケア医ができるナラティブに必要な6つのCについて、事例を挙げて解説した。(Conversations、Curiosity、Circularity、Contexts、Co-creation、Caution)。聴講する参加者の真剣な眼差しをヒシヒシと感じ、それにつられて話の脱線が多かったため、時間を30分ほど延長しての講演となってしまった。
講演後の情報交換会で、弘前大学の学生さんに囲まれ、総合診療のことや今後の学習の仕方について等たくさんの質問を受けた。学卒の編入生が多い印象を受けたが、彼らの医療に対する真剣な態度に、地域医療への希望を見出すことができた。
1泊2日の日程で、ねぶたの里も楽しむことができた。青森県出身自治医大卒業生の皆さん、弘前大学の加藤教授、学生さん、聴講していただきありがとうございました。(山本和利)