海堂尊氏が書いた「イノセント・ゲリラの祝祭」を読んでみた。これは小説の姿を借りた死後画像診断Ai(エーアイ)を推進するための書物であり、痛烈な厚生労働省批判書でもある。一歩進めて、厚生労働省解体を主張しているようにも読める。ただ厚生労働省に対して不満を常々感じている者には面白いかもしれないが、小説として読むとあまり面白くない。法医学学会と病理学会の利権争いについてもかなり誇張して書かれている。世間では「医療安全調査委員会」創設の議論が紛糾を続けているらしい。法医学サイドからは、異状死死因究明制度の確立を目指す議員連盟が「死因究明医療センター」を構想しているという。
作家としての自信と病理医として培った経験がここまで過激に書かせるのだろうか。
自分の関連領域である地域医療について、私自身若い頃のような情熱をかけて、新たなシステムを構築するために過激な発言も辞さない覚悟が必要なのではないと考えさせられた。(山本和利)