8月15日、敗戦の日。この時期、戦争に関する映画がいくつか上映されている。『キャタピラ』(若松孝二監督:日本 2010年)という映画を観た。寺島しのぶ(2010年ベルリン映画祭で最優秀女優賞を受賞)が熱演している。田舎の村で暮らす帰還兵(顔面が焼けただれ、四肢を失った無残な姿:芋虫:キャタピラ)夫婦の姿を通し、戦争の愚かさを描いている。勲章を胸に“生ける軍神”と祀り上げられる帰還兵。東京大空襲、米軍沖縄上陸と敗戦の影が迫る中、戦場で人間としての理性を失い、蛮行の数々を繰り返してきた自分の過ちに苦しめられる。1945年8月15日正午、天皇の玉音放送。戦闘場面はないが、戦争の残酷さを考えさせられる。
その他、『ハート・ロッカー』(キャスリン・ビグロー監督:米国 2009年)という映画。バクダッド郊外の炎天下、処理班と姿なき爆弾魔との壮絶な死闘。イラクに駐留するアメリカ軍爆発物処理班兵士が戦争のスリルにのめり込んでゆく姿を描く。現場の悲惨さはTVゲームとは違うのだ。折角除隊したのに戦場にスリルを求めて戻ってゆくとは・・・。
『ONE SHOT ONE KILL-兵士になるということ』(藤本 幸久監督:日本 2009年)という映画。サウスカロライナ州パリスアイランドのアメリカ海兵隊ブートキャンプ(新兵訓練所)に入隊した若者が、12週間の訓練で「戦場で人を殺せるようになる」ための洗脳教育場面が描き出されてゆく。恐ろしい!日本に生まれた幸せをしみじみ感じた。
『ウィンター・ソルジャー ベトナム帰還兵の告白』(“ウィンターフィルム・コレクティブ”編集:米国 1972年) 勇気あるベトナム帰還兵たちが公聴会で戦場の悪夢を生々しく語る。しかし、米国のマスコミが黙殺。その証言を記録するドキュメンタリーである。
『ハーツ・アンド・マインズ ベトナム戦争の真実』(ピーター・デイヴィス監督:米国 1974年)第47回アカデミー賞でドキュメンタリー長編賞を受賞し、数多くのベトナム戦争映画に多大な影響を与えたドキュメンタリー。さまざまな証言や取材映像を通し、ベトナム戦争の真実に迫っていく。
こんな映画を観ていると医療の問題が小さく感じてしまう。(山本和利)