40年前フォーク・クルセダーズで活躍した精神科医で精神分析の専門家である北山修氏の退官講義を収めた『臨床心理学入門』(NKH教育 2010年7月26-29日)というTV番組を観た。40年の時が精悍な青年を白髪の落ち着いた感じの紳士に変えていた。TVにはこの40年間あえて出なかったとのことである。その理由の一つとして、TVは「うら」を伝えられないこと、見ることで想像ができなくなり、創造力が低下することを挙げていた。
臨床心理において、「ことば」は5つの点で重要である。
1. 名付けをする。
2. カタリシス効果をもたらす。
3. 意識化する。
4. 心の内容が変質する(部分的にしか表せない)
5. 人生を物語にする。
日本語は非言語化を好む。日本人は鬱積を心に溜めやすい。・・・中略・・・
TVやビデオで編集が進むと、素顔がどこかに行ってしまい、「自惚れ鏡」となってしまう。時代がどんなに進んでも自分の心を映し出す鏡はない。カウンセラーは心の照らし返し役になることで、生き残る道がある。そうなるためには修行(口伝)が必要であり、包容力のある二者間「内」交流ができなければならない。
ラストメッセージは「いなくなるから取り入れられる」であった。(子離れしない母親の話すことを子は受け入れない)。定年で教官が去っていくのも重要であるといって教壇を去った。
ポジションに執着しないことも重要なのであろう。(山本和利)