『The Biopsychosocial Approach: Past, Present, Future』(Richard M. Frankel、et al. 編集:University of Rochester Press 2003年)を読んでみた。
導入でGeorge L. Engelの論文The Clinical Application of Biopsychosocial Model.
Am J of Psychiatry.1980;137:5.を、付録でThe Need for a New Medical Model: A Challenge for Biomedicine.Science.196(1977);129-36の全文を読むことができるのが嬉しい。有名なSystems Hierarchyが掲載されているのは1980年のものであり、心筋梗塞既往のある55歳のセールスマン(2児の父親)が以前と同様の症状を起こしたため救急室に運ばれてきたという事例を取り上げてBiopsychosocial Approachを解説している。受診の不安、血管穿刺の失敗、心停止、蘇生術(成功または失敗)を図示して解説している。1977年の論文は図や表は一つもなく、Biopsychosocial Approachという概念の提案となっている。
Biopsychosocial Approachの6要素は次の通りである。
1. 患者の物語と生活環境情報を引き出す
2. 生物並びに心理、社会要素を統合する
3. ケアにおける人間関係性を重視する
4. 医師自身の考え、感情を省察する
5. 臨床問題の解決に焦点を絞る
6. 多面的な治療をする
Moira Stewartらは、 これから出発して臨床研究を踏まえて「患者中心の臨床技法(6要素)」を提案したものと思われる。(1.疾患と病いの両者を探る、2.全人的に理解する、3.共通基盤を探る、4.予防・健康増進に努める、5.良好な人間関係を構築する、6.現実的になる)
これはGeorge L. Engelの業績を盛り込んでBiopsychosocial Approachについてまとめた素晴らしい本である。3,000円台で手に入るので総合診療・家庭医療を目指す人には是非購入していただき、一読を勧めたい。(山本和利)