『ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る』(ダニエル・カーネマン著、楽工社、2011年)を読んでみた。
著者は2002年にノーベル経済学賞を受賞した心理学者である。「ヒューリスティックとバイアス」研究で有名である。直感に関する進化論的な考え方は[知覚]→[直感]→[推論]だそうだ。直感は高度なことをするが、系統だったバイアスやエラーも犯す。
知覚の特性。
1)「変化」に集中し、「状態」を無視する。
・単なる賭けと財産を賭けた場合では、好まれ方に違いが生ずる
・賭けは満足度で評価される
・満足度を決めるのは、「変化」であって「状態」ではない(これをプロスペクト理論という)
・負の選択に直面した時にはリスクを追及する傾向にあり、逆に利得領域ではリスク回避的である。
2)足し算をすべき時に平均値を求めてしまう。すなわち、苦痛が続いて急に終了したときよりも、その苦痛にそれよりも苦痛の少ない期間をさらに追加したことの方を人は好む。
経済学は「人は合理的に行動する」という前提で理論を構築しているが、実際にはそうではないということを、著者らが心理学の実験を通じて証明したということである。幸福とはお金の総量ではなく、他者を喜ばす変化量に比例するとも本書の中で述べられている。
医療政策を作るときに、このような視点も入れて構築して欲しいものである。(山本和利)