映画館で観られなかった『BOX 袴田事件 命とは』(高橋伴明監督:日本 2010年)という映画を年末にDVDで観た。
1966年、静岡県で起きた一家4人強盗放火殺人事件をそれに関わった裁判官の目を通して描く。警察・検察が容疑者に自白(虚偽自白)を強要し、冤罪が作られてゆく過程を丹念に描いている。それとなく、出生地、職業、趣味、裁判官内の学閥、等が裁判結果に影響してゆくことも知らされる。死刑確定後、精神を崩してゆく死刑囚。再審は認められるのか?今、袴田死刑囚はどうしているのか?
意に沿わない判決を下した裁判官の苦悩。家庭崩壊の危機。劇中の言葉「人を裁くということは、自分も裁かれるということである。」が胸を突く。裁判官役の萩原聖人と無罪を主張する元ボクサー役の新井浩文の熱演が光る。観て損のない社会派映画である。(山本和利)