『ブックガイドシリーズ基本の30冊 科学哲学』(中山康雄著、人文書院、2010年)を読んでみた。
科学哲学に関する著作30冊を紹介している。科学哲学前史の章にあるアリストテレス『自然学』、ガリレオ『天文対話』くらいはついて行ける。アリストテレスの四原説は有名。地球中心の有限宇宙論はアリストテレスの自然論と天文論に基づいた説であるが、それに異を唱えたのがコペルニクスで、望遠鏡を用いて得られたデータからアリストテレスの宇宙論を批判したのがガリレオである。『天文対話』は架空の人物3名による4日間の対話から構成されているという。次のカント『プロレゴメナ』、マッハ『時間と空間』となるとついて行けず読み飛ばしたくなる。
章は「論理実証主義」、「パラダイム論」、・・・「個別科学の哲学」と続く。自分自身が馴染みのあるところを掻い摘んで紹介しよう。
クルト・ゲーデル『不完全性定理』で、有限のステップによりなされる証明の限界がどこにあるか明確に示した。
カール・R・ポパー『推測と反駁』で、ある理論に科学的身分を与えうるかどうかの判定基準はその反証可能性にあることを主張した。
大森荘蔵『流れとよどみ 哲学断章』で、二元論の伝統的構図を拒み、独自の哲学の営みを残した(私には読んでも理解できない)。
トーマス・S・クーン『科学革命の構造』の中で、パラダイム論を展開した。集団的認識論の試みであり、1970年以後の科学論に大きな影響を与えた。「通常科学」、「危機」、「科学革命」という科学活動の3様態がり、科学はこの3様態を繰り返しながら螺旋的に展開すると主張した。
アラン・ソーカル『「知」の欺瞞』で、有名雑誌に掲載された自分の論文が実はポストモダン風の科学批判を真似たパロディに過ぎなかったことを暴露し、「ソーカル事件」を引き起こした。
各テーマの終わりに日本語で読める参考文献が解説と共に掲載されているので、興味を待った読者にはその後の勉学の参考になろう。(難しい話をまとめるのは骨が折れる!)(山本和利)