『隠れた指/虫物語』(李清俊:イ・チョンジュン著、靑柿堂、2010年)を読んでみた。札幌市立図書館の新着コーナーにそっと置かれていたものである。
著者は、映画『風の丘を越えてー西便制』の原作者である。韓国では様々な文学賞を獲得している。虫物語を読んでいてはじめて、本作品が私の大好きなイ・チャンドン監督の撮った「シークレット・サンシャイン」の原作であることを知った。
息子を殺された女性が、宗教に救いを求める。犯人が逮捕され、やっと宗教を通じて心の平穏が訪れる。死刑執行を前にした犯人に会って、許そうと面会にいったら既に犯人は入信して、神に許されていた。一歩的な加害者の暴力に対して、被害者である女性は、絶対的存在である神に先を越されて許すことさえできない。どうすることもできない弱者としての人間の絶望を扱っている。
本書は30分で読める。イ・チャンドン監督の「シークレット・サンシャイン」もお勧めである。(山本和利)