『生きるための自由論』(大澤真幸著、河出書房新社、2010年)を読んでみた。
最初の自由について書かれた2章は、私には難し過ぎた。最後におまけのようについている「壁」の話が興味深い。
1989年11月9日にベルリンの壁が崩壊した。そこから始まったユートピアを、フランシス・フクヤマは、「歴史の終わり」と名付けた。その後、大きな2大対立は消滅したが小さな紛争は続いている。2001年9月11日の同時多発テロで「歴史の終わり」と言われたユートピアも終わった。そして一つの壁が崩壊した後、セキリティ上の無数の壁ができ始めた。2008年にサブプライムローンに端を発した金融崩壊が起こり、我々は、地球規模の壁の時代を生きることになった。米国の高所得者はゲートを施した地区に住み、世界の若者・オーム信者等が壁に囲まれた部屋に引きこもる。
無数の壁に囲まれて生きなければならない我々はどうすればこの状況を打破できるのか。本書には状況の分析のみであり、その答えは書かれていない。(山本和利)