『アメリカン・コミュニティ』(渡辺靖著、新潮社、2007年)を読んでみた。
米国って最近はイラクに戦争を仕掛けたり、経済破綻の元凶となったサブプライムローン問題などで評判を落としたりしている。世界最高の医療レベルを持ちながら、それにアクセスできない国民が30%以上いる国。そしてそれを改善しようとすると、自己負担が増えるという理由で反対する多数の国民。米国ってどんな国なのだろう。米国社会のコアは、その社会を内側から支えるコミュニティであろう。本書は社会学者が9箇所の米国のコミュニティを取材した報告である。
ニューヨーク州メープルリッジのボルダホフ(キリスト教原理主義)、マサチューセッツ州サウス・ボストンのダドリ-・ストリート(ゴミの町)、アリゾナ州サプライズのメガチャーチ(草の根宗教右派)、テキサス州ハンツビル(刑務所・死刑執行の町)等、様々なところに行っている。
米国は多様だ。そして、「賛成・反対」の二元論だけでなく、細かな議論もある。反論が用意されて一つに収斂しないようにはなっているが、その中心にあるのが資本主義、市場主義であることは否定できない。
米国の人々が様々なコミュニティに帰属せざるを得ない背景も見えてくる。ゴミの山・残飯の山のサウス・ボストン・ダドリ-・ストリートを有機野菜の香りで満たした試みなどは、地域再生の参考になろう(トップダウンの企画力・指導力・予算が重要と痛感する)。これを読むと米国への理解が少し深まるかもしれない。(山本和利)