『息もできない』(ヤン・イクチュン監督・出演:韓国 2008年)という映画をリクエスト上映企画で観た。
殴る・蹴るの場面がこれでもかこれでもかと出てくる映画であるが、見終わって余韻の残る映画でもある。家庭内暴力の中で育ち愛を知らない手加減のない仕事振りで恐れられている取立て屋と精神を病み、働けない父を抱えている女子高生の運命的な出会いを描く。
小児期に暴力被害を受け、成人となって否定したはずの暴力を生活の糧にしている男が、父親を殴る自分の姿が自分の嫌った父と同じであることに気付き、その無意味さに気づいたとき、ドラマが待っている。暴力が世代を経て伝播してゆく悲惨さが伝わってくる。
監督が持ち家を売って、さらに借金までして作ったという映画である。韓国映画の傑作がまた生まれた。(山本和利)