『ペルシャ猫を誰も知らない』(バフマン・ゴバディ監督:イラン 2009年)という映画を観た。
イランのクルド人監督バフマン・ゴバディがポップ・ミュージックへの規制の厳しいイランを、実在の事件・場所・人物に基づいてドキュメンタリー風に映画化したものである。デビュー作の『酔っぱらった馬の時間』はイランから迫害を受けるクルド人を描いていた。第2作目が『わが故郷の歌』、第3作目が『亀も空を飛ぶ』。今回は当局の規制厳しい中、その目を逃れながら密かに音楽活動を続ける若者たちの姿を描いている。当局に無許可でゲリラ撮影を敢行したそうだ。
出演者のほとんどは実在のミュージシャンたちである。地下室で音が漏れないように工夫しながら練習したり、田舎の牛小屋で練習したりといった場面がユーモアを交えて描かれる。ペルシャ語のラップミュージックも登場する。
監督はこの映画が完成後、イランを離れたそうだ。主役の2人も撮影が終了したわずか4時間後にイランを離れたらしい。反権力を貫き通す強靱な精神力に支えられて作られた映画である。音楽好きの方は是非ご覧下さい。(山本和利)