10月20日、札幌医科大学において三水会が行われた。参加者は11名。大門伸吾医師が司会進行。
振り返り4題。
食べられない88歳男性。食べない、動けない。糖尿病、高血圧、慢性腎不全、認知症。食が細くなった。BUN;100,Cre;4.0.身体診察とCT施行。著しい脱水が判明。老衰と説明し家族も了承。家族の了解を得て補液200ml/日で経過観察している。1カ月経て看護師から何もしなくていいのですかと問われた。困った顔をした。これ以上何もしたくないなという印象であるが、ステロイドや抗鬱薬が効くことがなかったか一抹の不安はある。多職種でカンファレンスをする時間的余裕がない。できることなら臨床倫理4分割をしたい。
88歳女性。食べられない。高血圧、慢性心不全、狭心症、逆流性食道炎。脳梗塞の既往。白内障。脱水、腎機能低下、好酸球増多所見あり。ステロイド欠乏状態が判明。ステロイド治療を行い食べられるようになったのでグループホームに返そうとしたがそこから断られた。主治医の趣向で方針が決められているのではないかという不安がある。多職種でカンファレンスをどうようにしたら開けるか。行政を巻き込むとよい。関心を示すスタッフを巻き込む、等の意見が出た。
思春期のケア。まじめそうな16歳男子高校生。電車に乗った直後より、腹痛が起こりトイレに駆け込むと水様便。進学に対するプレッシャーがあり、母親が無自覚。RomaII診断基準やBMW基準を参照し、器質的疾患の除外を検討した。リスクファクターがなければ大腸内視鏡は不要とのこと。過敏性腸症候群を疑い、学校に連絡し、母親への説明を行った。薬物療法を導入し、早めに家を出るなどの生活指導を実施。主治医自身も過敏性腸症候群であることを告げた。3ヶ月後、症状改善した。過敏性症候群は難治性疾患であると思っている。「いつでもトイレにゆける」という言葉を主治医が患者さんにかけたことはよかった。これは家族療法でもある。「腹痛」から「進学に対するプレッシャー」に焦点を移し、「治す」から「気にしない様にする」というコーピングをしているという点で、賞賛の言葉をもらった。
小児麻痺で知的障害のある50歳代女性。ベッド上生活。食欲低下があり血液検査を施行。肝腫大があり、大腸内視鏡で大腸がん(adenocarcinoma)が発見された。肝臓に多数の結節あり。化学療法は難しいという判断。家族は保存療法を選択。その後、腹部膨満が出現。施設での点滴を指示したが、看取りまではできないと主張する施設側。とりあえず入院とした。食事は全量摂取。根気よく食べさせる付き添いの家政婦さんの力が大きい。病院では特別することがないので、施設での受け入れを促したが拒否されたため、療養型施設への転院を勧めた。結局、施設でケアすることになった。2ヶ月後、点滴をしながら療養している。状況を改善しようとしたが、逆に患者さんのQOLを悪化させてしまったのではないか。退院後の往診などのフォローアップ体制があればとも思った。
臨床登録医の医師からALS患者の在宅人工呼吸器管理の準備について報告があった。気管カニューレの交換実習。飼い猫が同居していて問題ないか。災害時の電源確保は発電機で。多職種の人々が大勢集まり連帯感が高まったことを報告。
北海道プライマリケアネットワークの補助金をもらって企画した「中高生への禁煙教育と喫煙アンケート調査」研究をするつもりであったが、実態調査は学校を通じてはしにくいので、意識調査に変えなければいけないという問題が生じた。参加者全員で話し合いをした。学生さんがどれだけ真剣に記入してくれるか、学校・父兄の対応などについて熱い議論となった。(山本和利)