札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年7月9日金曜日

まだ水俣病は終わっていない

7月9日、1,2,3年生の特別推薦学生(FLAT)を対象にランチョンセミナー勉強会に参加した。13名が参加。まず本日の外来で診た不明熱、心雑音の患者さんを紹介した(前回、心臓の聴診実習をしたので)。その後、寺田豊助教の主導で「夜間呼吸困難を訴える女性」のシナリオを用いて前回の復習。

<コミュニケーションについて>次の4つについて解説をしてくれた。
・言語的、準言語的(声のトーン、強さ、言葉づかい)、非言語的メッセージの3つがある。
・メッセージ(言葉)、メタメッセージ(態度)。これが一致しないと二重拘束(ダブル・メッセージ)となる。
・コンテクスト(背景・文脈)とコンテント(内容)
・言語的追跡(相手の話についてゆく行動)

  今回のメイン・イベント。2年生の学生さんが『水俣フィールドワーク』に参加したときのことを報告してくれた。水俣病はメチル水銀が原因である(1959年熊本大学が確定)。1968年政府が認定。ハンター・ラッセル症候群に類似。感覚障害、運動障害、視野狭窄、頭痛などの症状を起こす。「まだ水俣病は終わっていない」がフィールドワークのキーワードだそうだ。原田正純先生の講演の内容を要約すると、水俣病は公害の原点(環境汚染が原因、食物連鎖による生体濃縮、胎児性の症例)。チッソの見舞金によって被害者が分裂させられた。また隠れてしまう患者たちもいる。医学を忠実に行うことが重要である。問題に依拠し、事実に依拠すること、患者そのものを診ること。「患者の近い側に立つ」という中立を提言された、と。
チッソ工場の見学もした。旭化成はチッソの子会社だそうだ。新潟水俣病もある。水俣病患者さんからの聞き取りにも参加し、7人の子どもを身ごもり水俣病で数人の子どもを亡くしたその女性の厳しい現実に胸を打たれたという報告で締めくくられた。
  聴講する部屋の中には静かな緊張感が漂う。終了と同時にあちこちから拍手。(山本和利)