11月30日、江別市立病院の 濱口杉大先生の講義を拝聴した。講義のタイトルは「総合診療について」である。先生は蚊や虫が好き。熱帯医学が一番の興味とのこと。
まず、医学生のこれからについて語られた。卒業→医師国家試験合格→臨床医学(または基礎医学)→臨床初期研修(2年間)→(自由の身)→(大学医局→市中病院派遣→大学院・留学→大学勤務→教授)または(後期研修→病院スタッフ→市中病院部長・開業)
ここで「学会って何?」を語る。同じ専門科の医師たちが、いろいろやろうと集まって作った団体(日本内科学会、日本外科学会など)。ほとんどの医師は自分の専門科の学会に入る。それぞれの科の専門医制度を作って試験をする。運営資金は年会費と試験の受験料などであり、年に何回かは集まって症例発表会をする。
医師免許は国が出す。すべての診療行為ができる。終身資格である(生活に困らない)。
専門医は各学会が出す。更新が必要であるが簡単。
博士号(学位)は大学のポストに就くのに必要。純正博士と論文博士がある(差がない)。
ここから総合医療の話。そうは言っても、わかりにくい。
プライマリケア医とは、どの分野においても初期の対応をする分野(眼科のプライマリケア、整形外科のプライマリケアなど)。プライマリケア学会に属している。とどのつまり、開業医(以前は臓器別専門医)のことで、日本医師会員のほとんど。
家庭医療医(家庭医)とは、診療所などで様々な分野の外来診療を行う医師で専門は「あなたの専門」。Family medicine(家庭医療)は米国発祥。米国帰りの広い診断・治療学を中心にscienceを重んじるグループと、純正日本の僻地医療を通して独学し、患者中心の医療としてphilosophyを重んじるグループの2つに大きく分かれ、多くの医師はその2極間のどこかに位置する。現在、人気上昇中。
総合診療医とは、入院病床のある施設で、外来・入院・訪問診療などを行う医師で、多くは総合内科医。米国帰りの家庭医もこちらに属していることが多い。大学の総合診療科や一般病院の総合内科に勤務。臓器別にしにくい横断的な救急診療や感染症診療との結び付きが強い。入院診療をするため疲弊しやすく人気がない。発祥は天理よろづ相談所病院。その他沖縄中部病院や市立舞鶴市民病院、佐賀医科大学。総合診療科というのは、多くの場合総合内科である。2010年度に3学会が統合された。
総合内科とは、主に入院設備のある病院で、内科全科の診断、治療をおこなう科である。
診断学が得意(独特の診断法をもつ)で、病歴聴取、身体診察を大切にする。感染症が得意。医学教育が充実している。ICU管理が得意。内視鏡などの手技もおこなう。ベッド数100床規模の病院が一番の活躍の場である。
ここで症例を提示。 20歳男性 陸上自衛隊員(生来健康)。発熱、全身筋肉痛で入院して10日間経過。血液検査、レントゲン、CT、MRIなどで診断がつかない。抗菌薬などを様々使っても軽快せず、総合内科に紹介。患者さんは猿のように毛深かった。後期研修医は病気になる前に何をしていたのかは聞いて10分で診断がついた。(ダニを介するライム病、スピロヘータが身体に入るのに2日間かかる)
北海道では医師の絶対数は多いが地方の入院病床をもつ病院で働く医師の数が激減している。研修は大学病院よりも研修病院でおこなわれる傾向がある。北海道では医師の絶対数は多いが地方の入院病床をもつ病院で働く医師の数が激減している。
地域、特に僻地と江別市立病院の医師チーム(4名)の循環システムを提案したい。この循環システム構築に必要なものは、「総合内科医をめざす若手医師の確保」と「全国から若手医師が集まるような魅力のある教育研修病院作り」である。
総合内科研修システムの概念
研修とは与えられた機会(chance)であり、指導と評価によって支えられている。機会だけあっても駄目。指導と評価が重要である。外部講師の招聘。江別市立病院だけでは全道はカバーできないので、名寄、北見、砂川、富良野、帯広、釧路、函館などの約300床程度の総合病院に総合内科を設立し、そこに指導医を派遣し地方病院で勤務できる若手医師を育て、それぞれの病院から循環型システムを使って医師群を地方病院に短期派遣する。これができた暁には途上国にも循環型で医師を派遣!
学生へのメッセージ。「是非、好きなことをやってください!」“英語の勉強と貯金”
この2つをやっておくと、いざやりたいことが決まった時にとても役に立ちます。
学生の感想を読むと、将来の進路について詳しくわかったこと、総合診療の中にもいろいろあると知ったこと、地域医療再生の方法を提示されたことなどを高く評価していることがわかった。(山本和利)