11月13日、第257回北海道内科地方会に参加した。
一般演題は呼吸器、腎臓、血液の発表を拝聴した。原因不明胸水に対して胸腔鏡で診断がついたマントル細胞リンパ腫、黄色爪症候群に併発した悪性胸膜中皮腫例、肺に限局した結節性肺アミロイドーシス、粟粒結核中に発見された結核性腹部大動脈瘤、結核性腸腰筋膿瘍、低K血症が著明なシュグレン症候群に合併した尿細管アシドーシス、扁桃腺炎後急性腎不全(IgA腎症の増悪、脱水を背景としたNSAIIDsによる腎虚血)、上気道感染後亜急性甲状腺炎と微小変化ネフローゼ症候群の同時発症例、小腸大量出血を来たした膜性腎症合併ANCA関連血管炎、バクタ・アレルギー(?)ネフローゼ症候群(バクタの予防投与の良し悪しが問題となった)、反復性皮下血腫と血気胸を持つEhlers-Danlos syndrome、等。
各発表に対して診断・病因について活発な意見交換があった。内科医の診断・病因に対する良い意味での拘りを感じた。
専門医部会教育セミナーの司会を山本和利が担当した。今回のテーマは「血球減少を呈する疾患への対応」で、札幌共立病院の古川勝久先生が提示をしてくれた。
第一例は「脳外科から紹介された貧血症例」で、低球性貧血であった。鼻出血、脳AVM、胃の毛細血管拡張が見つかり、オスラー病と診断された。病歴・身体診察の全体から疾患を考える必要を思い知らせてくれる提示であった。
第二例は「高血圧治療中に見られた血小板減少」で、大球性貧血もあった。胃癌による胃全的術を受けているため、ビタミンB12欠乏によるものと診断しその補充で貧血は改善した。血小板減少はさらに悪化し、最終的に降圧に用いていたカルシウム拮抗剤の中止で急速に改善した。いつも薬剤が原因でないかと念頭に置くことの重要さを再認識させられた。
最後に札幌医大第4内科の小船雅義准教授より「血球減少へのアプローチ」の講義を頂いた。
高齢者の貧血;Hbが低い方に分布している。貧血があると死亡率が高まる。定義はHb <11g/dl。悪性腫瘍、感染症を持っている人が多い。小球性貧血の大部分は鉄欠乏性貧血である。十二指腸が切除されていると鉄の吸収がなされず鉄欠乏性貧血(フェリチンが12以下)を引き起こす。静脈注射の鉄はブドウ糖に溶かすのがよい。少なめの鉄剤投与がよい。慢性感染症に伴う貧血(鉄剤を投与しても造血しない)を鑑別することが重要(輸血が唯一の治療)。
血栓、感染症が背景にある巨大血腫に対してワーファリン内服している40歳代女性を提示。
大球性貧血を示す高齢者で、悪性貧血(亜急性脊髄連合失調症)が増加している印象がある。貧血と黄疸がある場合、溶血性貧血(網状RBC増加)を疑う。
感冒で薬剤内服後の血小板減少。皮下出血で血小板が5.2万。薬剤中止で徐々に改善。薬剤性の可能性が高い。血小板減少を起こす可能性のある薬剤は3,000種類以上ある。
ITPにHP除菌で血小板上昇した事例を提示。(その他の治療法:ステロイド、脾摘出、免疫抑制剤)。肝臓疾患を除外する必要がある。
血小板減少の20歳代女性。その後汎血球減少となる。最終的に白血病を発症した。
MDSと診断できない血球減少症(特発性血球減少症)という診断概念が出てきた。
血球減少に対して、最新の情報を織り交ぜながら、事例を提示してくれた講義であり、プライマリケア医の私にとって大変有益が内容であった。(山本和利)