11月17日、札幌医科大学において三水会が行われた。参加者は9名。大門伸吾医師が司会進行。日本PC連合学会誌の事務局が紙面作成のため参加。
振り返り3題。
初診から看とりまでした83歳の肺がん患者。左肺上葉に結節影。肺がんでClass V。呼吸器専門医受診を家族に伝えた。その後家族がでて来て告知をしない方針になり、対処療法で外来経過観察となった。内服加療を続けながら介護認定を申請。Ca 11.5mg/dl、発熱、SaO2低下、食欲低下、咳、呼吸苦が徐々に出現し入院となった。酸素2l/分。告知はいまさらできない。地元の訪問看護を紹介する予定であったが、突然血痰等の症状が出現し死亡。振り返り:家族の希望通り自宅でしばらく経過観察できた。苦痛が少ない。告知をすべきではなかったかと反省している。地域医療資源が乏しい。告知について;告知するメリットの方が大きい。告知後の精神反応がある。参加者からこれまで受け持った末期がん患者さんについての報告があった。
脳梗塞で嚥下機能が低下し肺炎を繰り返す86歳女性。娘が1時間かけて食事をさせている。発熱、低酸素血症、炎症反応あり。CTで両側下肺野に肺炎像。娘と栄養の方法を検討したところ、娘は経口摂取に拘った。再度、発熱、心不全症状出現。この経過を5回繰り返す。働いているため娘は自宅で看られない。施設では1時間かけた経口摂取は無理。施設に入るには胃瘻を作らざるを得ない。結局、入院3カ月後に胃瘻作成。リハビリ病棟に転棟。振り返り:肺炎のリスクを下げることができた。主治医自身が胃瘻をつくることについての考えが固まっていない。造設する医療者と長期管理する医療者で考えが異なるのではないか。アンケートによると胃ろう、人工呼吸器を望まない人は94%。事前指示が普及することを望む。胃瘻の適応を厳密にすべきである。「できるけれども、あえて行わない」という選択肢も念頭に置く。「胃瘻で生きているのを見るのは辛いが、何もしないで死なせることはできない」
アルコール依存症一歩手前の52歳男性。失業中。兄を頼って帰郷したら、兄はアルコール依存症であった。意識が低下し受診。るいそう、脱水、肝機能障害あり。1食100円で過ごし、家で焼酎1l/日摂取。検査の結果、アルコール性肝炎。CAGE質問票を実施。精神科医にコンサルト。行動変容を促すアプローチを目指した。社会復帰サポート・センターを居場所とし、ボランティアをしてもらう。所長がサポートしてくれ、生活保護を申請した。体重が増加し、意欲もでてきた。5A(Ask, Assess, Advice, Assist, Arrange)アプローチを行った。面接の「反映」技法を用いた。科学的事実を伝える。難しいことを言わず簡単にアドバイスした。
これらのディスカッションの様子は日本PC連合学会誌の総合カンファランスの欄に掲載される予定である。(山本和利)