最近、「患者さま」と呼ぶように指導している医療機関が増えている。私にはそれを使いたくないという抵抗があったが、『街場のメディア論』(内田樹著:光文社 2010年)を読んで気持ちがすっきりした。
「患者さま」という呼称は医療を商取引モデルで考える人間が思いついたものであるという。そうなると「患者さま」は消費者的にふるまうことを義務付けられる。
「患者さま」という呼称を採用するようになって病院の中で起こったことは、1)入院患者が病院の規則を守らなくなったこと、2)ナースに暴言を吐くようになったこと、3)入院費を払わずに退院する患者が出てきたこと、だそうだ。
弱者の味方をすることと「患者さま」と呼ぶことは等価ではない。医療者が患者さんに同等の関係で医療を提供し、患者さんがそれに対して素直に「ありがとう」という言える関係を取り戻したいものである。
(山本和利)