札幌医科大学 地域医療総合医学講座

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地域医療総合医学講座のブログです。 「地域こそが最先端!!」をキーワードに北海道の地域医療と医学教育を柱に日々取り組んでいます。

2010年9月21日火曜日

地域医療フォーラム2010

9月19日、東京秋葉原で開催された自治医科大学主催の「地域医療フォーラム2010」に参加した。参加人数は340名、そのうち卒業生は約220名。今回は第3回目で初めての東京開催である。

 午前中、女性医師支援フォーラム、自治医大地域医療フォーラム2009の開催結果報告がなされた。
 午後、開催挨拶後、尾身茂氏から趣旨説明。自治医大の枠を越えて呼びかけ。地域医療の再生、医師の地域および診療科の偏在を問題視。異なる利害のために誰も身動きができない(deadlock)。このDeadlockをどうやって打開するか。地域におけるグランドデザインの構築、」総合医の役割・意義、地域医療を目指す医師の養成について分科会で話し合うことを提案。

3つの分科会。1.地域医療再生の地域の取り組み、全国の取り組み。2.地域の高度医療機関に求められる総合医。3.地域枠学生の教育にどう関わるか。

厚労省の新村和哉氏の講演。地域医療再生計画の概要。国は2350億円を使っている。医師確保。ハードよりソフト重視。モデル事業的に行う。寄付講座、地域枠学生への奨学金貸与、等・・・。地域医療支援センターについて言及された。特別枠として17億円要求。各県に1か所設置。1県に3300万円。

高知医療再生機構副理事長家保英隆氏。「高知県における地域医療再生計画の取り組み」医師数は少なくないのに若手医師が減少している。県庁所在地は医師過剰。郡部で減少。59億円の大部分を医師確保対策に充てている。高知医科大学学生へのアプローチ。若手医師のキャリア形成。県外からの医師招聘。入試選抜法を改革し、県内出身者を全体の1/3まで増やした。社団法人化してお金を使いやすいようにした。「病院GP養成」の仕組みを作っている。
 
全体討論。
・「地域医療再生の地域の取り組み」各県によって事情が異なる。総合医の比率を上げる。全国レベルの医師派遣を(all Japan)。
・「全国の取り組み」:計画作成に活かせる実態調査を。全体のビジョンの明確化。地域全体を見渡せる医師。
・「地域の高度医療機関に求められる総合医」ニッチを埋める能力、横断的な分野、メネジメント能力。
・「地域枠学生の教育にどう関わるか」卒前教育。Outcomeは都道府県への貢献である。

鹿児島大学大脇哲洋教授より講義。研修医数は半減。医学部入学者数8846名。地域枠で増やしている。都道府県との協議しているのは36県。キャリアパスについては32%。地域医療教育は学生全員に。施設の基盤が不安定である。総合医だけでなく専門医教育も必要。地域枠は期間限定なので地域医療関わる医師数に波がある。各県によって事情が異なる。どのような地域で働くのかで、目指す専門領域が異なってくるのではないか。

徳島大学谷憲治氏の「徳島県の取り組み」。病院の規模によって1群、2群、3群と分けて研修を予定している。「地域医療研究会」を作った。現在91名が参加。医療の世界を広く見てゆきたい。阿波踊りに「地医輝連」で参加。自主参加で、屋根瓦方式で行っている。学生の方に情報が入ってこない。全国組織のネットワークを作る。アンケートで全国調査をする。

新潟大学井口清太郎氏の「地域枠学生の連携」について講義。自治医大学生、県費奨学生、新潟大学地域枠学生の三者が顔が見える関係性を構築するために合同合宿を行っている。WSと懇親会が重要。入口だけでなく出口を考える必要がある。地域医療講座は寄付講座が大多数であるが、それを永続的な講座にしてほしい。
ゲストコメント。

全国国保協議会会長の広畑衛氏。会員の40%が自治医大卒業生。自治医大と同じ悩みを持つ。

日本プライマリ・ケア連合学会理事長の前沢政次氏。総合医の活躍の場は病院規模が大き過ぎず小さ過ぎずが大事。総合医の割合が一定以上必要。組織のトップは分ってくれていても専門医の同僚がわかってくれないことが多い。地域協働型プライマリ・ケア、選挙の人と免許の人が仲良くする、制度化されたジェネラリストのための専門医制度の確立が必要。総合医に必要な4つの能力は次の通りである。
1. 情報のマネジメント
2. コミュニケーション
3. チームワーク
4. 変化に対応できる能力、 とTrisha Greenhalghの言葉で締めくくられた。

総括:医学部長、桃井眞里子氏。解決には地域住民の理解が重要。日本は米国の6倍の受診率。地域医療の現状についての情報を発信する必要がある。総合医、総合力のある専門医をつくる教育が重要である。

最後に地域医療振興協会理事長の吉新道康氏が、地域医療マインドの涵養に全寮制の意義が大きいことを強調された。(山本和利)